ペンペン グリペン グリペンペン

竜田川高架線

グリペン・マリタイム

 この風は、潮風かそれともエンジンの排気か。

 生物が腐ったような匂いと、灯油が焼ける匂いが、海と空の二種類の青に挟まれた空間に流れる。



 1機、2機と鷲獅子が撃ち出されていった。

 そして後ろに並んでいた後続機がカタパルトの前までスルスルと移動し、そして前脚とカタパルトが接続される。

 パイロットやクルー達が合図をしたら、100メートルの長さすらない距離で、一気にスピードをあげてすっと飛んでいく。



 彼らはぐるりと海の上を飛んでから、そして帰ってくる。

 ただそれだけ。

 発艦して、飛んで、着艦する。それだけの練習。

 小鳥が飛ぶのを覚えるように、鷲獅子はとまり木に戻る練習をする。

 海の上の、巨大だが限りなく不十分なとまり木に。



 海が香るこの場所に、彼らは陸からやってきた。

 海の上で、灯油を燃やして飛ぶだけ。

 重い荷物を背負って、決して遠くない場所へいくために。

 

 何となく、可愛いと思った。

 その名前を冠するには、少し不釣り合いな愛嬌のある見た目だ。

 本来は戦車を引く役目があった。

 それと、黄金を守る役目。

 名付け親は、そんなことまで考えただろうか。

 彼らの仕事内容を考えると、こじつけようとすれば出来る。



 語呂が良いんだろうな、と笑った。



 ここで、彼らが「笑うんじゃねえよ、自慢の名前だぜ」と怒ってくれれば、少しは面白い。

  

 彼らは灯油を少し飲んだら、また飛び立っていった。

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