第184話 同い年の友だち

「だからっていうわけじゃないけれど、私のこの年不相応としふそうおうな外見は、種族差や寿命の長短なんかとは、なんだか のところに要因があるような気がするのよね。……とは言っても、 の具体的な要因がいろいろ思い浮かんでくるわけじゃないから、これはまだあくまでも、 の自説に過ぎないんだけど。……だけど、そういえば、アンタのところの村長さんも、かなり を取っているみたいだったのに、あんまり けていなかったわよね? それに、どちらかと えばアンタより、力が り余っているみたいだったし。……だってそうでしょう? 畑仕事と家事を両立し 、なおかつ、反抗期を えた少年の面倒まで見なくちゃならないなんて、そこらのよぼよぼじいさんたちには、とうてい無理な だもの。とするとやっぱり、村長さんの元気の秘訣ひけつは、その生活習慣にあるのかし 

 そういうと、自分もひと月くらいの なら、同じ屋根の下で暮らしていたはずなのに、ユリは考え込むようにして、平時の村長の らしぶりをルーツに事細かに聞いてき 

 だが、ルーツが うに村長は、少しばかり昔の仕来りにとらわれ過ぎていて、現代の便利な暮らしをあまりよく思っていないことを いては、特に変わった生活を営んでいるわけではないのである。食べる物や る時間に関しても、そこまで村長がこだわりを持っているとは えないし、おそらくはユリの考え過ぎだろ 

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 しかし、それなら最後に参考までに、村長さんの正確な年齢を、ここで に教えておいて欲しいとお いされて。ルーツは不意に不可解な、問題にぶち当たることになってしまったのだっ 

「どうしたの? まさか、十一年も一緒に らしてきて、年齢すら知らないわけじゃないでしょ ?」

 自分の単純な疑問に して、ルーツがあまりにも長い間、じっと黙って考えているので、ユリはちょっぴりからかうようにしてそう ってきたのだが、残念ながらその り。ユリに色々問いただされて、ルーツは初めて気が付いたのだが、ルーツは まで村長に、そのおおよその年齢すらも聞いたことがなかったのであ 

 だが、わざわざ自分の年齢を したがる理由なんて思いつかないし、おそらくはきっとただ単に、たずねる機会が無かっただけの話なのだろう。

 それからも、ユリは自身の外見と年齢の矛盾むじゅんを解き明かすことに固執こしつして、いろんな人の風貌ふうぼうにちくいち言及してみては、何やらぶつぶつ言っていたのだが、 しい話になってくると、ルーツはやっぱり聞き手に回ることが多くなっ 

 しかし、中には意味が からずとも、思わず尋ねたくなってしまうような話もいくつかあり、そしてそのうちの一つというのがシャーロットさんの だったのである。

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「だけどね…… に不思議な話なんだけど。この前、久方ひさかたぶりに会ったシャルの姿、なんだかまったく を取っていないみたいだったのよ」

 さきほど自分自身の言葉によって、不老不死を否定したばかりにも わらず、早くもその可能性を匂わせてくるようなユリの態度に、ルーツは強く興味をかれた。

 もちろん、いきなり永遠の なんて言われても、ルーツはにわかに信じることは出来ないのだが。もしも自分がそんな体質に まれていたら……などと、有りもしない仮定の話を えるのは、意外とワクワクすることなのである。

「本当なら、とっくに三十代半ばに し掛かっていてもおかしくないはずなのに、シャルの見た目は十一年前に私と れた時のまま。どんなに多く見積もっても、二十五前後。ともすれば、二十歳だと嘘をついてもバレないような容貌ようぼうで、老化がピタリと止まっていたの。だけど、ここ十一年ほどの間中、シャルが かさずやっていたことをあげるなら、それは、ずっと の記憶の中でまどろんでいたことぐらいだし……、ひょっとして、 かの記憶を見ることと、老化のスピードの さには、なにかしらの関係性があるのかし 

 そんな、ユリの想像が本当に っているのなら、ユリの身体が未だに少女のままなのも、なんとなく説明が きそうなものなのだが。

 人は自分の人生を生きている間だけ、歳を ることが出来るのかもしれないと、ユリは謎めいたことをつぶやいて、この を打ち切った。

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 だが、仮にもし ここで、ユリの実年齢が見かけとかけ離れていることが判明していたとしても、正直ルーツは、あんまり にはならなかっただろう。

「だってさ、どう えても、こんなに少年相手にむきになる大人の女性はいないもん。……そりゃあ、知識の や、ものの考え方においては、ユリは僕よりちょっとばかり大人っぽいかもしれないけれど、まだまだ精神的には どもだよ。だから、あらかじめ断っておくけど、この ユリの本当の年齢が判明することがあったとしても、 を年下扱いしないでね。これからも僕は同い年の友だちとして、ユリに するつもりでいるんだか 

 そういうと、『精神的に子ども』という表現が、逆鱗げきりんに触れてしまったのか。いつになく、強烈すぎる肘打ひじうちが脇腹の辺りにやってきて、ルーツは腹を抑えながら、布団の をしばらくのたうち回ることになる。

 しかし、ユリは人にいろいろ当たり らしておきながら、なぜだかすこぶる機嫌がよろしいようなので。もしかすると、この理不尽な暴力行為には、照れ しの意味合いもふくまれていたのかと、ルーツはそんなことを えながら、ひとまず眠りについたのだっ 

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