夜のコドモタチ

キャハハ、アハハと幼子おさなごの声が暗闇を駆け抜けるように過ぎていく時がある。


でも気配はするのに、姿は見えない。


「夜のコドモタチ……か」

尻尾をゆっくりと揺らしながら黒猫がポツンと呟く。


夜のコドモタチは実体も魂も持たない。

それは風のようなものかもしれない。


無邪気な笑い声に似たものを聞くのは決まって、子を亡くした母なのだという。

そうして、惹かれるように何処までも何処までも追いかけていってしまう。

永遠に追いつけるはずのないものを追い求めて……。


夜は人が思うよりも優しくて、でも残酷でもある。


だから、愛しいものの声を、その中に聞いたと思っても、決して追いかけてはいけない。


黒猫は「にゃあ」と猫らしく鳴いてみた。

それから、夜のコドモタチが往きすぎた闇の先を目を細めてみつめてから、自分もまた、夜の闇の中に溶けていった。

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