星磨きの海星屋

流れ星が落ちて集められるのは夜の深淵だ。

いつからか、此処に集められた光を失った星を磨くのが海星ひとで屋の役目になった。


海星ひとで屋では小さな海星たちが働いている。みんな無口で滅多に話すことは無い。

一人一人(と、呼んでいいのか疑問だが)には実はちゃんと名前がある(闇鴉の情報)らしいけれど、知るものはいない。


星の磨き方は変わっていて、海星二人が一つの星を受け持つ。

星を挟んで向かい合わせに立つと、星を抱くようにして呼吸をあわせて振る。

すると、すすのようなものがハラハラと落ちて夜の暗闇になるのだ。

何度か繰り返すうちに星は柔らかい光を取り戻す。


ちょうど真夜中の0時になると、星を空へ帰すための月光のリフトが降りてくる。

磨き終えた星はそこに乗せられて空へと帰っていく。


やっと仕事を終えた海星ひとで屋の海星たちは星から落としたモノで出来た夜の暗闇を枕にしてスヤスヤと休む。


一度、黒猫が寝心地を聞いた事があるそうで、答えは「熟成されてフカフカ」だったらしいが。


あくまでも噂なので真偽の程はわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る