闇鴉たちの囁き

「今度来たあの子の様子はどうだい」


『ああ、暫く、しょんぼりしていたけど、黒猫があぶくの子守唄を聴かせてやったら眠ったようだよ』


「そうかい。それなら良かった。それにしても、やっぱり幼い子が此処に来るのは、やり切れない気がするね」


『確かにね……きっと早くに” 月の小舟 ”が迎えに来てくれるとは思うがね』


「そうあって欲しいものだ」


『大丈夫だろう。あの子の瞳はまだ、闇色に染まってはいなかったからね』


あぶくの歌も聴き過ぎれば魅せられてしまう」


『元々、あのあぶくの声は』


「そう」



夜ヲ想ウ、ウタ



『「ぷく、ぷく、ぷく、ぷく、と」』


『あの女が墜ちながらのこした声があぶくになった』


「女の想いと夜が混じりあって此処は出来た」


『それから……墜ちてくるもの達の声……』


あぶくの声はのこり続け、歌になる」


『「此処は夜の深淵……」』




『おお!” 月の小舟 ”が降りてきた』


黒猫が音もなく尻尾を揺らしながら現れた。


「黒猫よ、眠ったそのまま、その子をそっと乗せてやるがいい」


黒猫の尻尾がフウワリと広がり、幼い子供を優しく包んで、小舟へと運んだ。


そうして、黒猫と闇鴉達が見守る中、月の小舟は静かに昇って行ったのだった。


空には満月。


月明かりが夜の深淵に薄らと届いていた。

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