闇は語る

ほう、ここが思っていたよりも優しい気配で満ちていると、そう言うんだね。

天鵞絨びろうどのような肌触りだと。

変わった子だね。


そんな風に例えたのは君が初めてだが、そうだな、ここは君たちが思うよりも、ずっと安らかな場所だよ。


私?見た通りの黒猫だよ。


なんで猫が喋るのかって?

それはが私そのものだからだよ。

だから、この世界に来た君には

私の言葉がわかるのさ。


しかし、此処に来るには君は少し幼すぎるような気もするが……。

ああ、あの深淵を覗いてしまったのだね。

哀しいことだ。

君のような子供が覗けば目もくらむ。


そうして墜ちてしまったのか……。

手を差し伸べるものはいなかったのか。


どんなにか怖かっただろう。

墜ちながら見た人たちは、微笑わらっていた?

そうか……。


ああ、あのあぶくはね、此処に来た者達の声なんだ。

それがこうして歌になる。


眠くなってきたのかい?

いいとも、ゆっくりとお眠り。

寂しくないように、ほら、

私がここにいて、

子守唄を聴かせてあげよう。


夜ヲ想ウ、ウタ


ぷく、ぷく、ぷく、ぷく、

弾けた泡から流れる声は優しい



もう怖いことはないから


ゆっくり、おやすみ。

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