夢を見ている




夢を見ている


埃と黴が充満する地下駐車場

横たわる影が捨てられた廃品のよう


孤独に揺蕩う夜闇に身を潜める

影よりも濃い黒を纏った野良猫のよう

その瞳に火を宿し世界を睨み

爪を立てたアスファルトは仄かに熱い


時の流れに忘れ去られた

静寂とともに眠る部屋

アルカホールの波間に浮かんで沈む

氷もすぐに溶けて消える


瞼の裏に張り付いたアルバム

時を宿ぜば思い出のビデオテープ

壊れて押されたままの再生ボタン

流れる景色が首に巻きつく


夢を見ている



夢を見ていると祈る声をグラスに注ぎ

窓の向こうで笑う月を添えて

呑まれるように身体に溶かし

漂う音楽と揺蕩えば仄かに甘い


忘れることを忘れた温もりを

灯した小さなキャンドルの揺らめき

甘く香る影が優しく手招き

身を委ねればもう帰れない



夢を見ている


息をするだけで心が爛れる世界のうつつ


夢を見ている



この身を溶かして夜になる夢を


夢の理想を



いつまでも夢見ている















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