夢を見ている
夢を見ている
埃と黴が充満する地下駐車場
横たわる影が捨てられた廃品のよう
孤独に揺蕩う夜闇に身を潜める
影よりも濃い黒を纏った野良猫のよう
その瞳に火を宿し世界を睨み
爪を立てたアスファルトは仄かに熱い
時の流れに忘れ去られた
静寂とともに眠る部屋
アルカホールの波間に浮かんで沈む
氷もすぐに溶けて消える
瞼の裏に張り付いたアルバム
時を宿ぜば思い出のビデオテープ
壊れて押されたままの再生ボタン
流れる景色が首に巻きつく
夢を見ている
夢を見ていると祈る声をグラスに注ぎ
窓の向こうで笑う月を添えて
呑まれるように身体に溶かし
漂う音楽と揺蕩えば仄かに甘い
忘れることを忘れた温もりを
灯した小さなキャンドルの揺らめき
甘く香る影が優しく手招き
身を委ねればもう帰れない
夢を見ている
息をするだけで心が爛れる世界の
夢を見ている
この身を溶かして夜になる夢を
夢の理想を
いつまでも夢見ている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます