第4話 筋書き
簡単に騙されるんだなと思った。
あやめは確かめもしないで浮気されている可能性をあれやこれやと自分で勝手に思い出し、あっという間に瑛士から心が離れていった。
あやめとある程度の時間一緒にいて、薄々は感じていたのだが、バカは死んでも直らなそうだなと思った。
今まで付き合ってきた彼女たちのように、俺に尽くそうとしたり、無理をして調子を合わせてくるところがあやめにはなかったので、興味をそそられてはいた。
「
後輩の竹本がとぼけた顔で言ってくる。
彼は断っているのにいつも週末草野球に誘ってくる。
言いたくないのだが、俺はあまり運動が得意ではないので毎回断っている。
「あいつらの関係はもう手遅れだったからな」
そう言いながらも、二人には意地悪なことをしたなと感じた。
「ダメ元で俺も誘ってみようかな~」
竹本は同期の女の子を狙っているのだが、彼女には彼氏がいる。
割り振った仕事はそつなくこなしてくれるので助かっているが、何かが欠けているというか、俺が女だったらこいつをわざわざ選ばないと思う。
「ワインが無くなってきたな」
そろそろ帰りたくなってきたので話をそらす。
「今はラブラブな時期ですか?」
話を戻された。
竹本の話をぼんやりと受け流しながら、あやめを俺のものにしたところで自分は一体どうしたいのだろうと不思議に思った。
こんなことなら今までもう少しまともに恋愛しておくべきだったと少し後悔した。
割と早い段階で、慶一郎があやめに気があることに気が付いていた。
それは俺にとって都合のいいことだった。
そもそもあやめとの関係があんなに持ちこたえるとは思っていなかった。
彼女と一緒にいると常にペースを乱される自分がいて、慶一郎は人に合わせようとしないあやめを面白いと思っていたようだが、俺は大きな不満を持っていた。
初めのうちはあやめに対して愛情があったのだが、少しずつ消えていくのがわかった。
しこりが残らないようになんとか別れられないものかと日々考えていたときに、慶一郎が付き合っていた彼女にあまり魅力を感じていなそうだったので、チャンスを逃してはいけないと感じた。
色々熟考した結果、かなり年上の女性と間違いをおかしてしまったということにした。
願わくは慶一郎があやめにそのことをやんわりと伝え、揉めることなく彼女に見切りをつけることができますようにと思った。
俺の願いは簡単に叶い、他人に左右されない未来を取り戻すことができた。
慶一郎にはあやめを押し付けるような形になってしまって申し訳ないと感じるが、これからは傍観させてもらうことにする。
まことしやかにウソをつく。 たこみ @codename-takomi
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