第13話 絵本
扉(壁?)を壊した先には、子供部屋のような部屋があった。
中にはちゃぶ台のような机や玩具、本棚が置いてある。
……ん、机の上に絵本がある。
えーっと、『わたしのおうじさま』……?
「何かしらその絵本。」
「んー。作者のところが黒く塗り潰されてるみたいだけど、明らかに子供の字だよな。
とりあえず読んでみるか。」
『わたしのおうじさま ■■■■■■■』
『あるところに、ひとりのおんなのこがいました。
おんなのこは、いつもはおうちの2かいいがいのばしょにはいっちゃいけないないけど、たまにお父さんがかえってきたときは“こどもべや”まで行けました。
その日はお父さんもすこしだけはなしをきいてくれるので、おんなのこはその日がだいすきでした。』
胸ポケットから、ローナが呟く。
「……この女の子、まるで監禁されてるみたいね。」
ページには笑顔の女の子と顔を黒く塗り潰された男が描いてある。
反抗期だろうか。……いや流石に違うか。
「……そうなんだろうな。」
そう返事をしてページをめくる。
『女の子には話しあいてがいません。
おうちには“しようにん”の人たちがいたけど、声をかけても何もはんのうしてくれないからです。』
「あぁ、最近は小さい子に挨拶しただけで通報される時代だから……」
「どう考えてもそういうことじゃないでしょうが……!」
ローナのツッコミはいつでも鋭いなぁ。
「……やっぱり、そうだよな……」
『おうちにあるのは本だけで、あそびどうぐは“こどもべや”にしかないので、本をよむことしかやることもありませんでした。
だから女の子は、とてもさびしかったのです。
でもある日、お父さんがおにんぎょうさんをくれました。
おにんぎょうさんはかおもないし、おようふくもきていなかったけど、お父さんからはじめてちょくせつもらったプレゼントだったので、女の子はとてもよろこびました。』
「あっ。」
急にローナが声をあげた。
「どうした?」
「このページに描いてある
「……デッサン人形にしてはでかいな。」
女の子の半分くらいの大きさあるぞ。
「小さい子って小さなものでも大きく感じるのよ。」
「なるほど。」
またページをめくる。
『女の子はお人形さんを“おうじさま”とよんで、ずっといっしょにいました。
お人形さんのうごきに合わせて女の子がしゃべると、まるでお人形さんとおしゃべりしているみたいでたのしくて、女の子はお人形さんがだいすきになりました。
まいにちまいにち、女の子はいつもお人形さんといました。もうさびしくはありません。
だってわたしにはおうじさまがいるんだもの!』
「まるでハッピーエンドみたいだな。」
「……本人にとってはハッピーエンドだったんでしょ。」
……あれ。
「何かページ増えた。」
「は?」
「すごいな……生えたのか?」
「ページが植物か何かだと勘違いしてるのかしら。」
え。流石にそれはない。
「ローナお前何言ってんだ……?」
「私の考え方がヤバいみたいな言い方しないでくれる?」
変なやつだなと思いながらもページをめくる。
……さっきのページよりも紙自体が黒っぽい気がする。
『そんな風に幸せなまま、女の子は大きくなりました。そしてそれと同時に、王子様も成長しました。』
…………ん????????
「ローナ……俺馬鹿だから今まで人形って成長しないと思い込んでた。」
そうか、人形は成長するのか。
「大丈夫。馬鹿なのは間違いないけどその認識は正しいわ。」
「本当か……?知らない間にリ◯ちゃん人形が凄い進化を果たしてたとかそういうことじゃないのか?」
だってタ◯ラトミーだぞ?結構大人も驚くクオリティで来るそ?
「いくらタ◯ラトミーでもそこまではしないわよ!完全にホラーに出てくる日本人形とかそういうのじゃない!」
確かに。
全身育って男の子の人形がむさい男になったりしたら中々のホラーだもんな。
「そ、そうだよな。
……あっ!!分かった!」
「……一応聞くけど何?」
「寝てる間にお父さんがちょっと大きいのと取り替えてたとかだろ!」
「なわけないでしょうが。お父さん娘大好きじゃない。」
えー……?
「じゃあ監禁は過保護故にってことだな。」
「ないでしょ。そんな親なら娘の言葉に無反応な使用人即クビじゃない……。
……まぁ確かに誰かが人形を取り替えてた可能性は否定できないけど。
ってそんなことはどうでも良いの!続き!」
「お、おう。」
ローナに急かされて続きを読む。
『王子様は、なんと自分で喋れるようになったのです。』
「「 」」
「……………………………………………………ペッ◯ー君に進化したのか。」
「現実を見なさい!!!!!」
馬鹿はホラーに気付かない 湊賀藁友 @Ichougayowai
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