第12話 vs脱出方法

「それにしても簡素な部屋だな……」


 俺たちが今いる部屋は人が十人入れないくらいの広さで、あるものと言えば中心に熊の人形がぽつんと置かれているだけだった。


「熊の人形……?こんなもの、私が入った時にあったかしら?」


「中々可愛いよな。」


「……」


 何で黙るんだ……?


 まぁローナが黙るのはよくあることだし気にしても仕方ないか。


 そんなことを考えながら辺りを見回して、あることに気がついた。


「……なぁ、この部屋出口が無いぞ?」


「本当ね、私が前に入ったときはあったのに……」


 どうにかしようともう一度念入りに辺りを探すと、俺たちが入ってきた所に貼り紙が貼ってあるのを見つけた。


「えーっと、『ヒントハクマガタベチャッタ』……『ヒントは熊が食べちゃった』?


 ドジっ子だなぁ……」


 貼り紙を留めているのはどうやらハサミのようだ。

 お、剣は置いてきちゃったから武器ゲット出来てラッキー!

 あー、でもカバー無いから危ないな……。


「ねぇ、これってもしかして……」


「ん?まさか脱出方法が分かったのか!?」


「……そこの熊の人形の中にヒントがあるってこと……?」


 …………。


 …………?


 …………!?!?!?!?!?


「まさかローナ、お前この可愛いくまちゃんを切り裂けと……?」


 鬼か?


「でもそれしか脱出の手がかりは……」


 ……よし。


「分かった、俺が何とかしてみる。」


 そう言って壁を軽く叩きながら壁沿いを歩く、と、一ヶ所だけコンッと軽い音がするところがあった。


 俺はそこで立ち止まり、思い切り壁を殴った。


「!?」


「っつ~、流石に一発じゃ無理か……」


 でももうあと何発かやればいける。多分。


「なっ、何やってるのよ!」


「壁壊してる。」


 変なこと訊くなぁ。


「馬鹿なの!?

 たかが人形なんだから切っちゃえばいいじゃない!」


「えー、でも切らなくて済むなら俺はそれが一番いいと思うし……。

 あ、危ないからローナ降ろしとくな。」


 だってあんなに可愛い人形切ったら罪悪感やばそうだし。


 よし、もう一発!!


「馬鹿、壁を壊すなんて無理に決まってるじゃない……。

 そんな理由で意地はって何の得になるのよ?」


「罪悪感がない!」


 あ、いける。


 ボクシングをやってる時に教えてもらった渾身の殴り方が上手く形になっているのが分かる。


 これを食らってKOしなかったやつはいないぜ!



 ガン!と大きな音をたてて壁が崩れていく。


 どうやら向こうからしか開かないようなつくりの扉になっていたらしく、あまり厚みはない。


「……ゴリラ過ぎるでしょ……!」


「いやー、薄めの扉でよかったな!」


「薄めでも普通壊せないわよ……」


 案外いけるけどなぁ。


 __イイヒト……アリガト__


 ?


「ローナ、何か言ったか?」


「何も言ってないけど……?

 何?馬鹿すぎて遂に幻聴まで聞こえるようになったの?」


「今何か聞こえたような気がしたんだけどな……。

 まぁいいや、行くか!」


 うーん、空耳か。

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