第8話

最後の食屍鬼にライフル弾を眉間に叩き込むと後ろからジトっとした視線を感じる。ヴィクトリアだ。それの少し前からは茫然自失とはこの事を言うのだと言う見本の様な表情を浮かべた綾霧。私が無限収納から取り出したМ4A1をハルト達が配るのを見て悟る、逃げたなと。


「ヴィクトリア。任せた。」


「は?」


「…逃げるな。」


「…分かったわよ。綾霧さん、私達は魔術師なの。」


「……夢ですか?それとも本当ですか?」


「本当だ。」


片手から汎用魔術の中でわかりやすい火球を精製する。それを通路の先から顔を出した男の顔面にぶち当てる。少々八つ当たりを込めて。


「全員が?」


「そうだな。先を急ぐ。残りは後だ。」


デュラハンにМ4A1が行き渡ったのを確認しデュラハンを先頭に通路を走る。

ウーツ鋼の長剣はしまい、右手に炭素鋼の切れ味のいい長剣と左手に白い刀身の片刃で湾曲した短剣莫耶を構える。このスタイルが私の基本の戦闘スタイル。

アーサーは武器を捨て私が渡した特注品の70cm程の刃渡りの片刃のサーベルを構える。


通路の先には強固に魔術的防御の施された金属製の扉がある。警察の魔術師は1歩下がり89式小銃を隙なく構えて警戒する。ヴィクトリアに綾霧の防御を任せ、ハルトと頷きあいハルトも少し下がる。


長剣に魔力を流す、斬撃の威力を上げ、術式を断つ為に強度を高める


「この手の剣に割断の力を。」


原子同士の相対位置を固定し壊れないようにする。莫大な魔力は現象化し薄い紫のオーラを長剣が纏う。その後ろではサーベルにハルトが魔力を費やし術式の付与を行う。


「疾!」


一撃。それだけで扉は爆破されたように吹き飛ぶ。そこで後ろに飛び退る。代わりにハルトが前に出る。


「ヴィクトリア、綾霧。見ておけ、これが魔術師の闘争だ。」


ハルトが前に出ると同時に数十本の紫電の槍が飛び出す。敵は死霊術師、前に食屍鬼が数多遮る。ハルトは一閃、食屍鬼の群れを薙ぐ。私も支援の為に影を走らせ食屍鬼の真下から棘となり串刺しにする。同時に虚空に生み出した影で出来た短剣や短槍は奔り、死霊術師が飛ばした短剣数十本を迎撃する。


「我が名はハインツ・ロード・アインツベルン。冥府の真理を解き明かせし者だ!」


叫び、長剣を構え切り結ぶ、リッチが現れ魔術を行使する。火球が数多襲来しハルトを狙うのを莫耶を無造作に薙ぎ、飛んだ剣閃は火球を両断し迎撃。影が地を走る。リッチの身体を這うように伸び苦悶の声をリッチ5体、全てが上げる。数瞬後、そこには肺が残るばかり。ハルトは再び紫電の槍を放つと同時にサーベルに紫電を纏わせる。紫電の槍は回避した死霊術師には直撃しないが、地を這う妖蛇へと姿を変え死霊術師に迫る。施術短剣が飛び、妖蛇を仕留めようと狙うが全てが無駄に終わる。


「俺の名はラインハルト・ティルボード!」


動揺が走る。魔術師狩り、異端狩り、化物狩りとして高名な傭兵のハルトだ。元々が戦闘のプロではない死霊術師、動揺した瞬間、ハルトに斬り捨てられる。その瞬間に莫耶を脳天に突き立てた。


急所への神速の一撃。

魔術的に強化し尽くされ、計算づくの一撃は再生を始めようとした死霊術師の機能を完全にとどめを刺す

私ですら視覚に捉えきれない一撃。まさに神撃。

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HUNTER OF VAMPIRE 佐々木悠 @Itsuki515

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