第13話 海蔵寺での邂逅 堀 久太郎と柴田 源左 Scean10

『氏真殿だと・・・?』


『うむ、あの今川氏真殿じゃ』


 想像だにしなかった人物の名前の登場に一益は驚き眉を上げ友閑に確認する。


『氏真殿は当時徳川殿の庇護を受けて遠州浜松に居を構えておってな、上様がお造りを命じられた大船用の【百端帆】を進上するために上洛したという事であった』


『ほお~・・・あの大船用にのう・・・わしもあの大船に一度は乗ってみたかったものだ・・・』


『一益殿は鉄張安宅船の建造にも携わっておられたからのう、あの琵琶湖の大船に興味を持たれるのも無理はない・・・おおっと、話がそれたがその時の氏真殿との会見時に上様は以前に氏真殿から献上されていた千鳥の香炉と宗祇の香炉のうち宗祇の香炉を今回の献上品に対する謝礼としてお返しすることになったのじゃよ』


『うん⁉ 千鳥の香炉、宗祇の香炉といえばお香好きの信長様がその香炉で香を焚きたいばかりにあの南都東大寺秘蔵の天下の名香、蘭奢待(らんじゃたい)を所望させた理由となったいわれの逸品であったな?』


『いかにも!』


『その内の一つである宗祇の香炉をお返しするということは、元々その二つの香炉の持ち主は氏真殿であったということか・・・』


『うむ、その通りであるよ一益殿』


 一益は視線の先を宙に漂わし記憶の先からゆっくりと言葉を紡ぐ・・・。


『・・・ひと昔前、それがしが津田宗及殿の茶会に呼ばれた時に宗及殿が満面の笑みで家宝の香炉である不破香炉でお香を焚いてもらった事があったが、その匂いが何とも言えない・・・そう・・・上手く表現できないのだが、心の奥底まで安らかにさせられるような良い香りであったことを思い出す・・・』


『ほお・・・』


友閑は目を細めて一益の話を促す・・・。


『宗及殿はこう申しておった・・・「このお香は信長様から賜った特別な逸品でございます。当時、自前で香炉を所有していた私と宗易(千利休)殿だけに拝領された特別なお香なんでございますよ、フフフ・・・」と、少しばかり自慢げにな・・・』


『ほうほう・・・』


『今思えば・・・あのお香は蘭奢待であったやもしれぬ・・・。おお、そうじゃ、蘭奢待といえば友閑殿はあの南都への切り取り詣でには信長様と一緒に行かれておったのでは?』


『行っておりましたぞ。あれは、氏真殿が相国寺に参った前の年でござった。天正二年(1574年)三月、上様に命じられて南都東大寺との蘭奢待切り取りの交渉を仰せ付かっておりましたからな、おかげで天下の名香の蘭奢待を拝むことが出来申したわ、カッカッカ・・・』


 羨ましそうに自分を見る一益に、友閑は笑ってみせるのであったが思い出したように表情を改めると、


『その日、上様は氏真殿と会見の折に氏真殿が蹴鞠の名手であることを話題に出し急遽きゅうきょ、日を改めて蹴鞠の会を催す事を決められたのじゃよ』


『ふむ・・・』


『元々、上様のその時の上洛の目的は先程も申したが、禁中の大補修工事の経過確認と貧困に喘ぐ諸公卿衆への徳政令を施行するという事であったのだが実はその裏で上様は懸案事項であったある人物との関係修復を図るという重要な目的もお持ちだったのだ・・・いやっむしろ、こちらの目的の方が上様にとって上洛の主眼目的であったやもしれぬのう・・・』


『ふむ、そのある人物とは?』


『時の関白、二条晴良様でござる』


『二条晴良様・・・うん? 友閑殿ちょっと宜しいか? 確認したいのだが・・・』


『何なりと』


『友閑殿の話しでは信長様は晴良様との関係修復を図りたいとのことであるが、お二人の関係はその氏真殿が登場した天正三年(1567年)時は悪かったのであるか?久我晴通殿を巡る関係でお二人は仲が良いと思っておったが・・・』


『お二人の間が険悪だったわけではないのだがこの時期はちと微妙な雰囲気がお二人の間で流れておってのう・・・その原因となったのが義昭公の処遇であったのじゃ』


『義昭公の処遇⁉』


『うむ。一益殿も知っての通り時の公方様であった義昭公を上様が元亀四年(1573年)に京より追放して以来、お二人の間に微妙な雰囲気が・・・なぜならば晴良様にとって義昭公は宿敵である近衛家を内裏から一掃するためにわざわざ越前まで行って義昭公を将軍位に就けようと心血注いで後援したお人だ、その義昭公を追放した上様に対しどんな感情を持ったか・・・さらにじゃ、晴良様を危惧させる凶報がこの時期、上様が上洛する三月の前月二月にもたらせられたのだ・・・あの宿敵、近衛前久様の帰洛を上様が朝廷に奏上されたのじゃよ・・・晴良様にとってこの凶報としか言いようがない上様からの奏上はまさに霹靂へきれきであったであろうな・・・』


『そのような事が・・・いやさその当時、そのような背景がお二人の間にあったとは、全く気づかなかったわ・・・』


『いやいや、当時常に戦場に身を置いていた一益殿が存じあげなかったのも無理もない。今思い返せば禁中の大補修や諸公卿衆への徳政も近衛様帰洛の件もあいあって朝廷内で隠然たる力を持つ当時の晴良様に対する上様の配慮だったやもしれぬ・・・そして晴良様との関係修復の決め手となる上様のとっておきの一手が織田家と二条家の間に姻戚関係を結ぶことであった・・・』


『おお・・・』


『上様は二条家の跡継ぎである二条昭実様に養女を輿入れさせることで織田家と二条家の関係は良好であることを天下に見せしめて朝廷内に漂う不穏な噂を払拭させようとしたのじゃよ・・・』


『ふうむ・・・そのような狙いがのう・・・。それであの二条下り藤の麒麟児と噂された昭実様との縁組であったか・・・』


『この縁組は晴良様にとっても願ってもない申し出であって、固くなに朝廷関係者との縁戚関係を拒んでいた上様が初めて前向きに動かれたということもあり晴良様は面目躍如でご満悦だったそうだが・・・。まあ、そのような思惑を持っていた上様が晴良様と細部にわたって打ち合わせをしようと考えていたところに登場されたのが氏真殿であった。上様は晴通殿の遺言書にあった忘れ形見である薫殿の件もあり氏真殿主賓の蹴鞠の会を催すことを急遽思い立たれたのじゃよ。公卿衆から蹴鞠の名手達を呼び寄せ、蹴鞠の会が終わった後に氏真殿を含めた参加者達のために慰労を兼ねて雅楽の演奏の宴を開くことを思いつかれ、その奏者に薫殿を指名した・・・で、あったかのう久太郎?』


『はっ、そのように伺っております』


『うむ、その宴の席に上様は晴良様、昭実様親子も招いており宴の終わった後に昭実様と上様ご養女となられた、さこの方との婚儀に関する打ち合わせそして重要案件であった近衛様帰洛の件を十二分に語られたあと・・・ククク・・・のう久太郎よ、そなたの出番であったな・・・クックック、アハハハ・・・』


『はっ・・・』


『な なんじゃ友閑殿・・・その意味深な笑いは・・・?』


『カッカッカ・・・これはあいすまぬ一益殿。いやさ、あの時の久太郎の茫然とした顔を思い出してのう、つい、クックック、思い出し笑いがこぼれてしまったようじゃ』


『久太郎の茫然とした顔だと! ほお、これは面白い、早う続きを聞かせて下され友閑殿!!』


『おうさ、あの日、氏真殿が上様の許に献上品を持参した日あれは・・・確か天正三年(1575年)三月十六日であったかのう・・・その日の夜分に上様から急遽呼び出された我らは、これはしたり、我らというのは村井貞勝殿、武井夕庵殿、そして不肖それがし松井友閑の三人は上様からの突然のお召しに何ぞ大事が出来しゅったいしたかと緊張の面持ちで上様の面前に参上したところ、上様から四日後の三月二十日に氏真殿主賓の蹴鞠も会を催すことになったため公卿衆の中から蹴鞠上手の者達を選出し名簿を作成の後、ここ相国寺に召し出すよう命じられたのじゃ。蹴鞠の会のあと宴を催すので雅楽の奏者も招くことなどと、そして蹴鞠の会の用を全て我らに話し終えたあと、上様はニヤリと笑うと「この者は必ずや奏者として呼び寄せること」と、仰せになって一人の人物の名前が書かれた紙を村井殿に渡されたのだ。その時はその件について深く考えなんだが上様が書かれた名前は薫殿だったのであろう・・』


『・・・』


『そしてその当日、盛況に終わった蹴鞠の会が終わって宴の催しもつつがなく終わり上様に場を辞するため挨拶に向かったところどういうわけか村井殿、夕庵殿も上様の傍にまだ侍っておってな、上様はわしの顔を見るとそちもここに残れと仰せじゃ、部屋を見渡せば二条関白様親子の姿もござって、末席には久太郎が訳が分からないといった風情でちょこんと座っておった・・・不審に思ったわしは上様に、これはいかなる趣でございましょうやと尋ねたところ上様はまたしてもニヤリと笑い、こう仰せられた・・・』



「関白殿には事前に伝えておいたが、呼びつけたそち達には今ここで改めて申し渡す。これから来る娘を皆で吟味するのじゃ、よいな!」


「「「はっ!」」」


「娘の名は薫、喜多嶋の姓を名乗っておる。先程の宴の場で筝を弾いておった奏者じゃ。故あってこの場に呼び寄せた。少し目が不自由だと聞いておる・・・特に久太郎おぬしは何故におのれがこの場に呼ばれたか分かっておらぬようだが、そちは特にいたわって娘を覗うのじゃ・・・そなたの奥になるやもしれぬからのう、カッカッカ・・・」



『と、そのようなお言葉があってな・・・フッ・・クックック・・・ハッハハ・・・あの時の久太郎の顔といったら、ハッハッハ・・・本当に茫然として訳が分からぬといった顔であったなぁ・・・いつも余裕のある表情を見せるそちがあんな表情を見せたのは後にも先にもあの場が最初で最後だったかのう、カッカッカ・・・』


『ふう~む・・・、わしも是非とも久太郎の茫然とした顔が見てみたかったわい、のう久太郎! ガッハハハ・・・』


『・・・』


『お二人共、そんなにお笑いあそばすのは、もうそれぐらいに。久太郎殿が気の毒でございますよ!』


 慈徳院は、顔を紅潮させ目を伏せている堀を見やりながら友閑と一益とたしなめる。


『いやっ! これは、すまぬな久太郎。ちと笑い過ぎたか? これもそなたへの親愛の情の表われと思うてはくれぬか?』


『いえ、お気になさらずに・・・』


『わしからも謝らせてくれ、久太郎。いつもしれっとして【品行名人】と昨今評判の高いおぬしの狼狽した姿が想像できなかったのでな、つい度が過ぎてしまったようだ、許せ・・・』


『お顔を上げてください、左近様!』


 無造作に頭を自分に向けて頭を下げる一益に慌てて堀は懇願する。


『ところでじゃ久太郎』


『はい・・・』


 一益は堀の言葉に面を上げるや、あご髭をコリコリと掻きながら堀に問う。


『晴通殿の遺言書に薫殿のことを書かれていたのは今の友閑殿の話しで分かったが、何故にそちに薫殿を娶らす話になっておったのだ・・・? まあ何とのう、その遺言書にそちとの婚儀を願うような内容が書かれておったことは想像できるがのう・・・そちは、晴通殿とは親しかったのか?』


『そうじゃのう! わしもその後上様より晴通殿の書状に娘である薫殿の件について久太郎との婚儀を願う内容が書かれておった事は聞き及んでおったが・・・何故、薫殿の相手にそなたが名指しされたのだ? もしや晴通殿と昵懇じっこんであったのか?』


『私も気になります。久太郎殿は晴通殿だけでなく・・・薫殿とも懇意でございましたか・・・?』


 一益、友閑、慈徳院の三人に問い詰められた堀はその語尾の強さに戸惑いながらも落ち着いて答える。


『薫殿・・・いや、これは失礼いたしました。我が奥と声を交わしたのはその時が初めてでございましたが・・・』


 堀は慈徳院に顔を向けそう答えると、継いで一益と友閑の目を見つめ二人の疑問に答える。


『久我様とは昵懇という分けではありませんが、知己にはさせてはいただいておりました』


『ほお・・・』


 友閑から嘆息の声が上がる。


『久我様からお声を掛けていただいたのは、上様が公方様、義昭公を奉じて初めてご上洛された永禄十一年(1568年)九月の翌月十月のことでした。あの時分、私は上様に命じられ義昭公の仮御所であった本圀寺の普請奉行のお役目にいそしむ日を過ごしておったのですがある日、村井様に伴なわれて久我様が来られたのです。その日久我様は上様からの依頼でまじかに迫る将軍宣下のため義昭公が内裏に参内する装束を持参されておりました。その時に村井様を通じて自己紹介をしたのが久我様との馴れ初めでございます・・・』


『永禄十一年(1568年)上洛時だと⁉ 久太郎、おぬしはその時幾つだった?』


『・・・16か・・・17歳であったかと・・・』


『16か17歳で公方様の仮御所の普請奉行とな・・・お前という奴は・・・』


 一益は唖然とした顔ですました顔で答える堀の顔をじっと見つめる・・・。


『一益殿、それがしも上様が奉行に久太郎を指名したと知った時は驚き申した。この久太郎が三渕殿、細川殿ご兄弟や摂津殿を始めとする幕臣達が居並ぶ前で本圀寺普請奉行となった堀久太郎秀政でありますと堂々と挨拶をする姿には感服したものでござった・・・まあ、この件で幕臣達の間にも久太郎の存在が注視されることになるのだが・・・それよりも、わしがもっと驚いたのは普請奉行を久太郎に命じた上様のことであるよ一益殿! まだ、年少の面持ちが残る当時の久太郎に公方様の仮御所とはいえ御座所の普請の奉行を上様はいかな心持でお命じになられたのであろうかと・・』


『・・・ふうむ・・・いつもの事ながら信長様の胸中は計り知れぬ・・・』


 そうつぶやく一益を見て友閑は、改めて堀に尋ねる。


『晴通殿と、その時面識があったというのは初耳だったが、その日以降もお付き合いがあったのか久太郎よ?』


『はい、久我様はその後も日を置かず普請中の本圀寺に参られて私に声を掛けられては、雑談をされてました。それ以降も永禄、元亀の年代には私が上様のお供をして入洛した時にはふらりと現れとりとめのないお話しをされては帰られたのですが、天正年間になるとお会いした事がなかったのでございます』


『やはり、義昭公を京より追放した事が影響しておるか・・・』


『おそらくは・・・』


 友閑は堀の言葉に、パチリ、パチリと扇子で拍子をとりながら暫く沈思していたがやがて、一つ大きく音をたてると、


『わしの想像だが、そなたとのささやかな会話の中で晴通殿はそなたの人間性に惹かれたのであろう・・・それで、自分の命のともしびがそう長くないと実感した時に心残りであった忘れ形見である薫殿の行く末をそなたに託した・・・ということではなかろうか・・・?』


『そうで、ありましょうか?』


『わしは、晴通殿の書状を直に読んではおらんが多分・・・間違いではなかろうな。更にじゃ、その書状の中には薫殿の行く末ばかりでなく久我家の行く末、いや、【源氏の長者】という氏の家燭かしょくの存続についてもお願いされていたのではないかと思うておる・・・』


『【源氏の長者】・・・で、ございますか・・・?』


『そなたの婚儀の宴の席で、普段あまり嗜まない酒を上様は上機嫌で口にされ饒舌になられておったが、その時、晴良様との会話でこう仰せになられておった』



「これで、久太郎の血脈がのちに久我家に合流すればあの世におる愚庵もさぞ喜ぶであろう・・・」



『と・・・、久太郎は憶えておらぬか?』


『そ そのようなお言葉を上様が⁉』


『まあ、あのような宴の席で舞い上がっておったそちには憶えておらぬのも無理はない。その上様のお言葉を継いだ晴良様がこのようにも仰せられたのじゃ』



「清華家筆頭の家格を持つ久我家が何故に我ら摂家を筆頭とする他の公家の者から敬われるのか・・・それは、【王子】の家系だからである。村上天皇の皇子が家祖となる久我家は村上源氏の嫡流であり、【源氏の長者】となれる家なのじゃ。朝廷内では同格とされる他の清華家、順に挙げると三条家、西園寺家、徳大寺家、花山院家、大炊御門家、今出川家は全てその家祖は藤原北家である。因みに朝廷内では最高の家格とされる我ら五摂家も家祖は全て藤原北家なのじゃ。つまるところ、我らは【王】の臣下である藤原家の子孫なのじゃ。であるから、【王】の【王子】である特別な家系の久我家を敬うのは臣下として当然である・・・うむ・・・在りし日の晴通殿はよく我に口にしておったよな・・・近衛家より久我家に養子として入った晴通殿はその事を特に強く念じておられた・・・他家から入った晴通殿は元々の久我家の者達よりも更に一層【源氏の長者】並びに久我家という名に特別な思いがあったのであろうぞ」



『とな・・・久太郎、憶えておらぬか?』


『・・・何やら、お聞きした記憶はございますが、詳しくは・・・申し訳ございませぬ友閑様』


『ハッハッハ。わしに謝っても詮無いことぞ』


『はっ・・・』


『ところで、友閑殿・・・』


 そこで、一益が口を開く。


『その久太郎の婚儀には、どなたが参席されておったのであろうか? すごく気になるのだが・・・』


『私も、知りとうございますわ友閑様』


『ふむ・・・そうじゃのう。あの婚儀に呼ばれたのは織田家からは村井殿、武井殿、そしてわしの三人。薫殿側で申せば、養父であった喜多嶋良滋殿、そして薫殿の後見人を上様から頼まれた二条晴良様、それと晴良様ご子息の昭実様であったな・・・』


『昭実様も参っておられたのか⁉ それは何故に?』






     ーーーーーーーーーー ☆ ☆ ☆ ーーーーーーーーーー





(チリ~ン~~~ チリチリ~ンンン~~~)



「久殿の婚儀の裏に、そのような背景があったとは・・・」


「私も、友閑様より話を聞くまではあまり憶えてなかったのですよ。恥ずかしながら、二条晴良様という貴人様まで参席されて舞い上がっておったのですよ、ハハハ」


「それは、致し方ないと存ずる。いかにお忍びとは言え、時の関白様であられる。久殿が緊張されてたのも無理もない・・・おう、そうじゃ昭実様もいらっしゃったと申されたが・・・昭実様といえばここ小田原下向の前に東福寺にてお会いになされましたな・・・?」


「源左殿、気になりますか?」


「気になりますのう、ククク・・・。わざわざ京に立ち寄って会われるほどじゃ、何やら仔細があったのではありますまいか?」


「仔細というほどでもありませんが、昭実様よりとても興を惹く関白殿下についての仮の話しに付き合ってはもらえないかと」


「ほう・・・興を惹く関白殿下についての仮のお話しでござるか。 して、そのお題目は何だったのであろうか・・・?」


 源左は一抹の不安を感じ、目を細めて堀の言葉を待つ。


「関白殿下が、此度の戦さでお亡くなりになられたら・・・という、夢・・・また夢、幻の仮のお題目でありました・・・」


「うっ! なんと!⁉」




























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