悪魔たちと僕

【お世話になりました】そうま

フワフワ、ユラユラ

 欲しいものほど手に入らない。青い鳥は実はそばに居る……なんて話もあったけど、少なくとも、僕の近くには人間ではなく悪魔しか居ない。ほら今日も、家の悪魔が黄色い飲み物を大量に摂取して、僕のベッドにやってきた。

「お前は本当にアイツの顔に似ていてムカつくな」

 首を絞められる、むせる。意識が遠のく。フワフワ。あぁ、また明日から夏なのにタートルネックを着る生活。お母さん、貴女が男と一緒に出て行ってから、僕は毎日この悪魔に殺されかけているよ。


 将来の夢などわからない。そもそも、3歩先も見えない。外を出れば汚いと避けられる。先生という名の悪魔も近所に住む悪魔たちも、汚いものには近づきたくないし蓋したいんだ。


「ほら、洗面台だぞ。ちゃんと顔洗えや」

 そう言われて顔を押し込まれたのは、洋式トイレ。いや、僕にはちょうどいい洗面台なのかもしれない。口の中にも水が入る。周りの悪魔たちは「汚ねえ」と笑いながら動画を撮っている。

「後であげるわ」

「炎上すんなよ」

「大丈夫だって、1部にしか見えないように投稿すっから」

「よし、一仕事終えたし、カラオケ行こ」

「賛成、1番、点数低かった奴の奢りな」

 僕と同じ制服を着る悪魔たちはゲラゲラ笑いながらトイレから出ていった。目にも水が入ったようだ、視界がユラユラと揺れる。




 弱いものが居るから強いものが居る。だからこそ世界は美しい。それならボクはずっと弱いもので居続けよう。フワフワユラユラ、クラゲのように漂うんだ。これでこの世界が綺麗になるのなら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

悪魔たちと僕 【お世話になりました】そうま @souma0w0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ