寒い国のセバス

セバスはナザリック産の魔馬車を操り、どこまでも続く険しい山岳地帯の雪道を走っていた。


「今回の目指す国は、他の国と交友はしないが貿易をしている不思議な国と聞いていますが、それ以外の情報は無いんですよね・・・」

ぽつりとセバスは呟く。


気温は真冬なので、摂氏十度はあるようでした。

しかしセバスは気温計を持ち歩いていないので、分かりませんでした。

そして空は真昼にも関わらず暗い空で、しんしんと雪が降っていました。


セバスはアイテムのおかげで寒さを感じないのですが、偶然人間に見られて怪しまれないようにするために、ボアの付いた防寒着の上下を着込んで、ボアの付いた分厚い手袋を装着して、防寒帽をかぶっていました。


そして通常の馬車だと険しい山岳地帯の雪道は、馬車ではとても走りづらいのです。

しかしナザリックで作られた「魔馬車」は、見た目は通常の馬車に見えますが、じつは魔法の力で走っているので地面には触れずに走ることが出来るのです。

その為、雪道やぬかるんだ泥道でも気にせずに走ることが出来ます。


馬車の中には何も乗せなくても良かったのですが、荷物を馬車に何も乗せずに雪道を走っていると人間から怪しまれるので、

寝袋、テント、食料、衣服など雪道を走る用の装備をカモフラージュで載せています。


馬車はこの先にある国へ向かって、何度も山道を上ったり下りたりしました。

そして、やっと平坦な道に出ると山岳地帯と打って変わって、鬱蒼とした森が目の前に現れました。

「おや、山道の次は森ですか・・・この先に本当に国があるのでしょうか?」

セバスは呟きました。



鬱蒼とした森の中も雪だらけで、人っ子一人住んでいないような雰囲気でした。

森の中の雪道を進んで行くと、途中でポコポコと樽ぐらいの大きさの雪の塊があちこちに存在していました。


その雪の塊は、奥へ進めば進むほど増えていきました。

「あの雪の塊は、いったい何でしょうか?罠ではないと思いますが、存在理由が分かりませんね・・・」

セバスは雪の塊を横目に見ながらそのまま進みます。



雪道をザクザクと進むと、セバスの行く先に道を塞ぐように大きな雪の塊が現れました。

「ここにもありましたか・・・このままでは進めないですね・・・拳の風圧で飛んで頂けるでしょうか?」

セバスは一度馬車から降りて、雪の塊の近くに移動しました。


「近くで見ると思ったより大きいですね。では行きますよ!」

フンッとセバスが空手の正拳突きのように雪の塊に向けて突くと、フワッと雪は空へ飛んでいきました。

「何とか上手く雪を飛ばすことが出来ました・・・」

セバスが道を塞いでいた雪を飛ばすと、まだ何かが道を塞いでいました。


「おや?いったい何でしょうか・・・?」

その道を塞ぐ物体は人間でした。

いや、人間だったものでした。


顔を見た感じは、二十代ぐらいの男性でした。



その人間だったものをよく見ると、お腹の部分がありませんでした。

そして首には獣に喰われたような跡がありました。


「獣に襲われたのでしょうか・・・このままでは可哀そうなので・・・」

セバスはこれ以上獣が食い散らかすのを防ぐため、もう一度雪を優しくかぶせました。

(どうしても弱き人間がいると、心が痛みますね・・・ナザリック地下大墳墓内の執事として失格でしょうか・・・)


セバスが馬車に戻ると、後ろから何か殺気を感じました。

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オーバーロード セバスの短編集 きりんじ @kirinjisann888

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