断片

ヒーロー

　憧（あこが）れの人が消えてしまった。僕にとって、彼は灯火だった。眩（まぶ）しくて、まるで神様のような大切な存在だった。

　僕が悩んでいる時は側に寄り添い、護ってくれた。そんな彼は、もう僕の側にいない。

　泣きそうになりながら僕は歩く。何でこんな事になってしまったんだろう。辛い。苦しい。怖い。逃げたい。

　———けれど。

　僕の憧れは、こんな時どうしていた？どうしたらあの人に近づける？考えろ。出来なかったことを悔（く）いるのではなく、今の自分に出来ることは何だ？

　そうだ。今までだってそうしてきたじゃあないか。

　追いつかないなら走り出せ。一歩でも近づけ。

　手が折れてもまだ足がある。怯（ひる）むな。

　足が折れたなら、這いずっていけばいい。ブレるな。

　心が折れたなら、誰よりも早く再構築すればいい。自身を鼓舞（こぶ）しろ。

　例えそこに誰もいなくたって。

　立ち上がれ。僕の散歩（甘え）はこれで終わりだ。

　彼を超えろ。