第5話 相席
異世界トリアムはイスクール王国、その首都チイチ。そこに存在する冒険者ギルド本部。その一階に併設された酒場『秋の恵み亭』その15番テーブル。
そこには人類を
「
「
「酸ッッッッッッッぱいッ!」
「麺つゆだコレ!」
無論、彼らは未成年なので飲むのは(広義での)ソフトドリンクである。
特に理由もなく、自分以外の飲み物を悪ふざけで注文し、盛大にクロスカウンターを食らった馬鹿四人。
それぞれが口直しのため注文した料理や菓子や麺、それを持ってきたウェイトレスのキャリーが申し訳なさそうに口を開いた。
「相席よろしいですかぁ?今日はテーブルがいっぱいで」
「ぐおお……いいですよ」
口の中に広がる味の暴力と戦う四人はよく考えずに了承する。
そして15番テーブルにさらに一つ影が追加された。
縦に開いた
彼の名前はレックス。
最近王都にやってきた、
「……邪魔ヲスル」
「ごほっ…こんにちは」
「ふぉん……にちは」
「ふぉんふぃふぃふぁ」
「……ずるずる」
まともに挨拶を返せたのは一人だけという有様であったが、レックスは特に気分を害した様子では無かった。
その後簡単な自己紹介を終え……。
「それにしても麺つゆはねぇだろ……」
「はは……」
「……」
四人は初対面の人が居たからといって話せなくなるほど人見知りではなかったが、どことなく会話にブレーキがかかっていた。
同じ冒険者であるし早めに打ち解けるに越したことはない……ちらっちらっちらっと視線が勇へ集まる。
「れ、レックスさん」
「ナンダ?」
「ご、ご趣味は?」
「見合いかッ」
小声のツッコミが入る。
「『ナマズレース』……ト言ッテ伝ワルカ?」
「なまずれーす」
「ソウカ、人族は『マイナマズ』ヲ持タナイノガ普通ダッタナ……」
「まいなまず」
カルチャーギャップから生まれる困惑が勇を襲う。
「湿地ニ住ムコトガアレバヤッテミロ、キット気ニ入ルゾ」
「あぁ、はい、やってみます……」
「……」
「……」
沈黙。助けを求める視線。それに力強く頷く楽。
楽は考える。あまりのカルチャーギャップに話のとっかかりにはならなかっただけで……最低限の
「レックスさんッ!」
「ナンダ?」
楽は口を開き……あることに気付き停止する。
「……?」
「……
「オッパ……?」
楽は両手を使い、胸の前で球を作るジェスチャーをした。
「アア……
「そんな……じゃあ
色々あるだろ……という横あたりからの声はスルーされた。レックスが苦笑しながら答える。
「
「尻尾……」
呆然とする楽。それを他所に知的好奇心を刺激されたらしい勉が会話を引き継ぐ。
「細い尻尾……栄養学的に考えたら太い尻尾の方が魅力的という事になるのでは?」
「
種族の差があっても分かるガチ切れだった。
「……イヤ、スマナイ、マア?一般的ナ?
取り繕いはされたが地雷を踏んだと察した勉。しかし、逆に、だからこそ踏み込めると判断した男が一人……。
了である。
「わかる」
「気ヲ遣ワナクテモ……」
「別に迫害されるということはないが……奇妙なものを見る目で見られるんだ」
「!」
了は朗らかに笑う。
「俺は胸の小さな女性が好みなんだ」
だぁん!と
「別にええじゃろがい!ドワーフがか弱い
テーブルに集まった様々な種族の男たちからそうだ!ソウダ!と声が上がる。
15番テーブルとその周囲は、了とレックスの境遇へ共感を覚える者たちが集まった結果、性癖暴露大会の場となっていた。
「
「
「あいつのぺったん好きをからかうの、控えよう……」
三人の優しい目に気付くことなく了が音頭をとる。
「それじゃあ、この世の胸の小さな!」「尻尾ノ細イ!」「耳の短い!」「毛深い!」「牙の小さい!」「か弱い!」「背の低い!」「鼻の長い!」「
『
ちなみに。
その日から王都の種族間の垣根が少し無くなったとか。
異世界チート馬鹿男子達 雷鳥 @Thunderbird
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