第4話 Sランク冒険者

 異世界トリアムはイスクール王国、その首都チイチ。その南大通り。

 そこには、日本で生まれ、異世界トリアムに転移してきた、強大な異能を持つ『稀人マレビト』の4人で構成されるSランク冒険者パーティの威風堂々たる凱旋がいせんの姿があった。

 今回の彼らの活躍、王国南部の大湿地に出現した、生あるもの全てにあだなす凶悪な屍竜ドラゴン・ゾンビ討伐の一報は、既に彼らの凱旋がいせんよりも先に王都に伝わり、人々を騒がせていた。

 通常ならば訓練された精鋭数百人で立ち向かい、多くの犠牲を払ってやっと討伐できる怪物、それをたった4人で何の犠牲もなく打ち倒した彼らへ向けられる感謝、尊敬、憧れ、そして少しの恐怖の感情。

 老若男女問わず多くの人々が彼らの凱旋を出迎え、抑えきれなくなった感情を歓声をあげたり、隣の者へ語りかけることによって発散していた。

「ありがたやありがたや……」

「おい、見ろよ…あれがあの有名な…!」

「俺初めて見たぜ!」

「きゃあああッ!勉様こっち見てえッ!」

「……」

 その中で一人冷めた目つきで喧騒を見やる男がいた。彼の名はノーマン。彼自身がAランクの冒険者であり、ギルド内の物事に詳しい事情通でもあった。



「さすがSランクパーティの『クーゲルシュライバー』だぜ!」

「『シュヴァルツシュヴァイン』が居ればイスクールも安泰だな!」

「ぼくも『ブラートプファンネ』のひとみたいになりたい!」

「ん?」

「あれ?」

「えっ?」

「……」

 人々にやや困惑が広がる中。正しいパーティ名を知るノーマンは沈黙を保っていた。


 悪ふざけでコロコロとパーティ名を変えたあげく、ギルドマスターに怒られてパーティ名を『四馬鹿』に固定されてしまったという、人々の興奮、尊敬、憧れに思いっきり水を差す事実。

 遠ざかっていく、紛れもない英雄であり、紛れもない馬鹿達の背中を見ながらノーマンはギャップに無さを感じていた。

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