第五章 第八話

二人はゼラリア基地を出て、シルフ本部へと向かった。


「これでよかったんですよね?」

「あぁ。良くやった。いい仕事をしたなメタ二」

 メタ二は憧れの俺に褒めてもらえてすごくうれしそうだ。

「さてと、ここがシルフ本部か……」

 やけに閑散としている駐車場へと着いた。

 そして、カード―キーをハッキングして中に入った。


 司令部内ではいまだに論争が続いていた。石川さんが行って、決裂した時はどうするのかについて……


※※※※※


「シルフのみなさんはじめまして、ニソラ・トリと申します」

 なんで部外者がここにいる?俺はこの設備のセキュリティだけは完璧だと思っていたのに……とんだ勘違いだったようだ

「誰だ?なぜここにいる?ここはカードキーがないと入れないはずだぞ!」

 石川さんが慌てて声を上げる。

「いやぁ~ハッキングさせてもらいました。まぁその代わり、朗報をお伝えしに来ましたので、お許し願います。では改めて自己紹介を……私、“ゼラリアのニソラ・トリ”と申します」

 ゼラリア?あの宣戦布告してきた組織じゃないか!なぜ奴がここに?!

 そして、俺は思い出した。

「ニソラ・トリ。お前ゼラリア所属だったのか。どうりでこちら側の事情に詳しいわけだ……」

「やぁ四条君!お久しぶりだねぇ~極秘棟の事知っておいてよかったでしょ?でも、驚いたなぁ~あれで、シルフから抜けさせて、こっちに引き抜こうとしてたのになぁ。まさか又戻っちゃうなんてほんとに計算外だったよぉ~」

「あの時に教えてもらったことは感謝する。でもなぁ、それで色々分かったんだよ。シルフはホントにいい人たちの集まりなんだってな!」

 ニソラは大きな声で笑い始めた。

「面白い!実に面白いよ!さすが、僕が見込んだだけのことはあるね~。っと……おや?もう一人の四条君もいるではないですか~?君もここに所属してるのかい?」

 八一が前へ出た。

「何の用だ。俺はもうシルフの一兵士として所属している」

「そうかそうか、まぁいいわ。それでだな、朗報というのは……君たちの頭を悩ませているゼラリアは壊滅したってことだよ」

 え?なに言ってるんだこの人……自分の組織の事を壊滅した扱いするのかよ……

 みんなも理解が追い付いてないようだ。

「つまり。宣戦布告はなくなったってことだよ」

 後ろからもう一人男が出てきた。

「はじめまして、私はセフィロス・メタ二と申します。今はニソラ様に仕えております。詳しく説明しましょう。ゼラリアのリーダーイエラニス・ゼラは自身がこの世界の支配者となるために、色々と活動しておりました。でも、ニソラ様は違った。ホントにこの世界を救いたい。そう思ったからゼラリアにいました。でもいざ活動していくと、ゼラの独裁は進むばかり、それで暗殺を実行され、現在に至るわけです」

 そして、ニソラが口を開いた。

「つまり、俺はどちらかといえば平和思考なもんでな……ゼラの方針にはうんざりしてたんだ。そして、俺はシルフへ加入して、世界を救おうと企んだ訳だ。だから、もしよかったら俺たちを仲間にしてほしい。裏切らない。約束する」

 ゼラリアが壊滅した理由はよくわかった。ニソラの思いも分かった。

 でも、何故だか信用しきれなかった。

「殺戮のニソラに、忌み子メタニか……フン。おもしろい」

 八一がつぶやいた。

「ニソラさん。裏切らない保証は?」

「保証か~難しいこと言うなぁ。保証になるかはわからんが、これをやろう」

 そういって、ニソラは自信の袖からボロボロのノートのようなものを出した。

「これは?」

「イシス文書……このことについて一連の事が書いてある」

 イシス文書――それはまさにこの一連の事件を解決させる唯一の手掛かりだった。

「それは!」

 ミーシャが声を上げた。

「ほ~イグラアス・ミーシャか!伝説のスパイがこんなところにいたなんてな~。そうそう。お前ならこの文書のすばらしさが分かるだろう?」

「分かるも何も!それを探して、私はスパイになったんだよ!」

 え?そうだったのか……でも、何故ミーシャさんはそこまでして、イシス文書を求めていたんだ?ますます疑問点が増えていく……

 AIが叩くキーボードの音が響き渡る。

「そう。まぁそれを読めばわかるんだけど。前回の事件も、今回の事件も全てはイエラニス・ゼラによって仕組まれたことだったんだ。彼が王に、神になるために今まで様々な人たちが犠牲になった」

「拝見する」

そう言って石川さんが読み始めた。


「拝見させてもらいました。この文書をみて考えました。あなたたちを正式に迎え入れます」

「理解が早くて助かるよ」

 石川さんが読み始めてから一時間と少し。

 俺たちはゼラリアの二人と色々話した。

 世界の事、組織の事など色々。

 その中で俺の考えはいつの間にか、信用せきないから信用してみてもいいんじゃないかに変わっていた。この世界を戻すためには必要なのかもしれないと思った。

「で、と……ここまでわかったんだ。あとの4、5日でなんとか方法を探すしかないね」

「石川さん。その文書には解決案は書いてないんですか?」

「残念ながら……」

 嘘だろ……ってことは結局手掛かりなしか――

「でも、手掛かりはあったよ」

 いや~それを先にいってくれよ……

「この世界が歪んだ理由。それは時と次元が起こした大地震だったってことが」

「??????」

 解せない……時と次元が起こした大地震?ん?ん?

「つまりどういうことですか?」

「つまり、時と次元が歪んでしまっているから、それを戻せば世界は元に戻るってことだよ」

 ってことは!!!!!一って次元を操る少年!なんとかなるのでは!!!

「石川さん。俺の力使ってなんとかなりませんかね?腐っても次元を操る少年なんで……どうでしょう?」

「だめだ!お前ひとりの力では何もできん!」

 一の提案に、ニソラがすぐに反論した。

「なんだよ‼力がないってのかよ!!!」

「そうだ、だから俺も手伝う!俺も腐っても次元師やってるもんでな……」

 なるほど!それならいけるかもしれない!!

「でも、今はまだできない」

「どうしてだよ!」

「今はまだ力が大きすぎる。闇の力がもっと広がって、本体が薄くなった時に狙わないと、およぶわけがないんだ。だから決行は4日後。世界が崩壊し、歪みが戻る直前だ!」

 ニソラの意見に一同は納得した。

「勝算は?」

「77%」

 低いなぁおい…………

 さてと、そろそろ、瑞穂が目を覚ますころだろう。

「石川さん。瑞穂のところに行ってきます」

「あ、私も行く~」

「了解!二人ともいってらっしゃい~」

 そして、俺と真白は瑞穂のいるヘルスセンターへと向かった。

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