第五章 第九話

「瑞穂~入るぞぉ~」

 病室を開けると、部屋の中の電気は消え、ベッドの上で三角形が動いていた。

 電気をつけると、そこには三角座りをして、布団に包まった瑞穂がいた。

「お~い。瑞穂ぉ何してるんだよぉ~」

 布団をめくって、俺は言葉を失った。

「な……な…………」

 瑞穂の背中には真白なきれいな羽が生えていた。

「お兄ちゃん……助けて……」

「瑞穂ちゃん!!どうしたのぉ!!羽以外は変なところない??」

「真白さん……大丈夫です」

 明らかに元気がない。

「どうしてそうなったんだ」

「起きたらもうすでに生えてた。最初は全く動かせなかったんだけど、今では自由に動いちゃうの……。ほら」

 瑞穂は羽をパタパタさせ風を放った。

「取り敢えず、司令部へ行こう!このことを報告しないと……」

三人は司令部へと戻った


 瑞穂を連れて行くと、全員が口を開けて驚いていた。

「これが覚醒の力か……」

「お父さん!覚醒ってなんなの?私どうなっちゃうの?」

「大丈夫だ……安心しろ」

 お父さんの明らかに大丈夫じゃない大丈夫に瑞穂は更に泣きそうになった。

 そして、瑞穂は羽を顔の前に持ってきて顔を隠した。

「瑞穂さん。ホントにその羽は大丈夫なんですよ!ただ、貴方が鍵なんだって示すために生えてきただけなんですよ~」

 ニソラが微笑みながら言った。

「じゃあ、もう一人の鍵も羽が生えてきているのか?それって大混乱を巻き起こすんじゃ……」

「一さん。その心配はありません。もう一人の鍵は死にました」

「え?」

 多分シルフの全員が耳を疑ったと思う。だって世界を戻すのに重要な鍵が死んだというのだから……

「それはどういうことですか?でも、まだ死んだと確定したわけじゃ……」

「いえ、私たちが暗殺したので、確実に死にました」

 なるほど―――――は?

 って、ことはもう世界は元にもどらないんじゃないの?!えぇえええ!って、ことは残った鍵も瑞穂だけ?それってかなり大丈夫じゃないよね……

「暗殺したってどういうことですか……」

「言葉の通りです。彼女は危険だ。このままではゼラにいいように使われるだけだった。暗殺することで救えた。結果的に、良かったと思う」

「じゃあ、次元作戦が失敗したときの最終手段は……?」

「いまのところ――ない!」

 メタ二が堂々と言った。それはどうしろと言うことなのだろうか……

「最悪……一つ方法はあるが、極力使いたくない」

 でも方法があるならまだ良かった。まぁ次元作戦が成功すればいいだけなんだが……

「そうだそうだ。ニソラさん。うちの山峰はどうなりましたかね?」

「山峰?あ~ゼラが人質につかっていたスパイの娘か。彼女はまだゼラリア内の独房の中にいると思うよ」

 メルディアさんの顔が一気に赤くなる。

「早く解放してください!どうして置いてきたんですか!!」

「申し訳ない。あれはゼラが勝手にやっただけだから、すっかり忘れていたよ」

「そんな……あなたを責めてもしょうがないですね……」

「わかりました。石川さん。今から基地に戻って助けに行って来てもいいですか?」

 ニソラが自分の非を認めたのか、助けにいくといい始めた。

「分かった。ではニソラ君とメルディア君、それに柊人君も同行してくれ、メタ二君はここにいてくれたまえ」

「分かりました」

「気を付けてね」

「って……俺も?!ま、ま、まぁいいかわかりました」

 そうして、よくわからないまま俺は山峰さん救出作戦へと出発した。


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