第五章 第二話

「うそだろ……。なんで瑞穂が写ってんだよ」

 戸惑う俺に石川さんが声をかける。

「この一瞬黒い影が大きく映っているここで、扉が開いたんだよ。そして、そこにいたこの少女。それこそが妹さんなんだね?」

 扉が開いたその場所には大きな影ができていてそこには瑞穂と見たことのない少女がいた。

「ドッキリかなにかですか?」

 最近ネットでみたドッキリ映像だと信じたかった。

「残念ながら……川井!今すぐ宗一郎を日本に呼び戻してくれ!」

 ハイ!という川井さんのあわただしい声が聞こえた。

「まさか宗一郎の娘が鍵だったとは……神はなんて意地悪なんだ。くそ!」

 そう。俺の父 宗一郎は前述にもあった通り、こんな感じで一人友人をなくしている。もう、何もなくさないようにこの研究を始めたのに、まさか娘がそんな羽目になるなんて。

「良子さん!車を出してくれませんか!今すぐ瑞穂を迎えに行きます!石川さん!文科省に掛け合っといて下さい!西星中学です!」

「わかったわ!はやくいくわよ!」

 安全運転でない方の運転手を選択して、瑞穂を迎えに行った。実は良子さんのRX-7には緊急用のサイレンがついているのだ。それを知っていたから良子さんを選んだのである。


西星中学に着くと、校長先生が出迎えてくれた。石川さんがしっかり働いてくれたようだ。そして全校放送で瑞穂を呼び出した。

「四条瑞穂です。入ります」

 瑞穂が校長室に慌てて入ってきた。

「お、お兄ちゃん?!何してんの?!」

「事情は後だ!さ、はやくついてこい!校長先生ありがとうございました!」

「え?あ!ちょっと!!」

 強引に車に瑞穂を連れて行った。

「初めまして、瑞穂ちゃん。お兄ちゃんの上司の百川です。急で悪いわね。あなたには聞きたいことが山ほどあるの!」

 今回は前をしっかりと見ながら話した。このスピードでよそ見されたらさすがにたまったもんじゃないからな。

「ねぇホントに一体なんなの?!しかもこの車サイレンついてるし!説明してよ!!」

 瑞穂が混乱するのも無理はない。急に全校放送で呼び出されて、サイレンついた車に乗せられて。

「説明するとだな。俺は世界を歪めてしまって、なんの間違いだか、お前がそれを戻す鍵と呼ばれる存在になっちゃったんだ。だから、今すぐ、色々調査しなきゃならないの!」

「お兄ちゃん……こんなときまでお兄ちゃんの趣味につき合わさないでよ!ちゃんと説明して!!」

「ほんとにそのままなんだって。俺が世界を歪めたの!したくてしたわけじゃない!信じてもらえないかもしれないけど、これは変わらない事実なんだよ!お願いだからわかってくれよ!!」

 こんな説明で納得できる方がおかしい。それは俺も重々承知だ。でも、わかってくれなきゃ、なにも始まらないんだ。

「なんとなく、その真剣な表情から察したわ。要するに大変なことになってるのね。で、私に何をしろと?」

 なんてことだ!さすが俺の妹!訳分かんない状況を納得してくれた!

「信じてくれて、ありがとうな。で、早速だけど、先週シオンモールに行っただろ?あの時誰と話してた?!」

「なんで私がシオンモールにいたこと知ってるの?!ストーカー?!きもぉおお!」

 普通の反応だが、改めて言われると傷つくな。

「違う!監視カメラの映像をみたんだよ!」

「そっか……あの時は……あ、カレーナちゃんだったかな?話しかけられて話したよ~天使みたいですっごいかわいかった!」

「それだぁああああああああああ!」

 そう、あの映像に写っていたもう一人の少女。それはとても小さくてかわいい天使のようだった!ほかにも天使のような人と話しているとは考えにくい。だからそのカレーナこそがもう一人の鍵だと推測した。

 そして、車は駐車場へと着いた。

「ついたわ!石川さんが待ってる!はやくいきなさい!」

「はい!」


 そして、瑞穂をつれて、司令部へと向かった。

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