第五章 「過去と扉と隠されし新たな真実」 第一話

8月が終わり9月に入った。暑さがいまだに猛威を振るう。学校が始まった。しかし、俺は学校ではなくシルフ本部へと向かう。シルフが文部科学省に掛け合い、“四条柊人”と“北斎真白”を(シルフ本部へ)留学として扱い、任務を全うせよ。とのことだ。さらにそれで、単位がもらえるというおまけ付き。個人的に勉強はあまり得意ではないからかなりありがたい。

 そういうわけで俺は昨日でシルフからもらった夏休みをすべて消化し、今日から出勤だ。

 そして、今日からは良子さんではなく一が高級車で迎えに来る。良子さんとは違って安全運転なので少し居眠りもできるかな?

 と、そうこうしてたら携帯が鳴った。一が下についたという合図だ。

「瑞穂~行ってくるなぁ~遅刻しないようにしろよぉ~」

「んぁ~い」

 シルフに行くのに何故制服なんだって?それは瑞穂にはシルフの事言えないから、誤魔化すためだ。ちなみにこれはシリウスからの助言。彼も一と同じく、切れ者のようだ。


 マンションの階段を勢いよく降りる。駐車場にはひときわ目立つ高級車。そして、三人が乗っていた。シリウスが何故患者棟ではなくここにいるのか不思議でたまらないが……

「おはよう柊人君。今日もいい天気だね」

 車の窓を開け紅茶を片手にしているシリウスと挨拶を交わした。ほんとに貴族だな……

「おはよう柊人」

 そして、運転席にはもう一人の切れ者が。

 で、もう一人のしゃべらなければ好青年は眠っている。

「みんなおはよう!今日から頑張っていこうな!」

 そういって車へ乗り込んだ。

 車は高速を使い30分程度で到着した。


 司令部

「おはようみんな。久しぶりだね!今日からがんばっていこ~ね」

「おはよう。朝から悲報が一つ朗報が二つあるけどどっちから聞く?」

 悲報と朗報両方聞くなら正直どっちでもいい……

「おはようございます。石川さん、百川さん。では悲報からお願いします」

 一が悲報を選択。

「かなり重たい話だから心構えて聞いてね。昨日の夜――」

 唾をごくりと飲んだ。また患者が増えたとかそんなんだろ……

「扉が開いたわ……」

「え?」

 理解が追い付かなかった。扉が開いた?なんで?どうして?鍵の二人はこの施設で厳重に守られてて、決して二人が会うことはないはずじゃ……

「百川さん。それはどういうことですか?」

「それについては僕から説明するよ……朗報の一つでもあるんだけどね。一週間ほど前にエルシス・ゾーディアと北斎真白の二人をこの施設の機密部屋で会わせてみたんだ。もし、鍵ならば近寄った時点で微弱な反応が出るから……でも、抱き合っても反応はなかった。つまり、最低でも二人のうちどちらかは鍵ではないということだ。そして、それ以降、二人は誰にも会わないように完全隔離部屋へと移動してもらったんだ。でも、昨日の夜、大きな電波干渉が起きて、調べてみたら、扉が開いていた。だから、二人はどちらも鍵ではなかったんだ。又振出しに戻ったよ。鍵が誰一人分からない」

 石川さんが苦笑いしながら言った。

「二人が鍵でない、ということは……まだ鍵は二人ともそれを知らずに生活していると?!それって危険じゃないんですか?!」

 シリウスが大声で言った。

「残念ながらそういうことだ。でも、扉が開いた時の場所は特定できた。そして、そこの場所の監視カメラの映像を今、川井に取りに行かせている。それを見さえすれば。きっと、誰か分かるはずだ」

「それで場所ってのは?」

「そこのシオンモールだよ……」

 シオンモール。それは家からわずか20分ほどの場所にある大型ショッピングモールである。俺もよく瑞穂と行く場所だ。あの時瑞穂と真白といったのもシオンモールだった。

 司令部の扉が開き、シルフの一番下っ端である川井吾郎が入ってきた。

「映像持ってきました!さっそくメインスクリーンに映し出します!」

「頼む」

 そういうと川井さんは手にもっていたUSBを近くのAIが操作していたPCに接続した。

 そして、映像が始まった。

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