第四章 第十九話

「改めて礼を言うわ。シルフへ帰ってきてくれてありがとう。そして、北斎さんの事……ごめんなさい」

 まだ怒りはあるが、ここでキレたところで、過去は変えられないのでひとまず話を進めることに。

「いえ、俺はいいです。傷ついたのは真白なので。でも、しっかりとした。説明を求めます」

「そういってくれると、助かるわ。説明するわね。北斎さんを監禁した理由は、彼女が鍵の一つとして候補に挙がっていたからなの、で、もし彼女がもう一人の鍵と施設外であってしまうと、扉が開き、世界は元に戻ろうとしてしまう。でも、その影響で変わってしまった世界と元の世界との矛盾を消すために、いくつもの人や物が時空の狭間に取り残されてしまうの。そうなったら最後。もうその人や物は世界には存在しなかったものとして、全人類の記憶から消されてしまう。それは消さなければならないの。何としても。そして、確実に能力者達や、鍵の候補達は時空の狭間へと堕ちるわ。だから彼女自身を守るためにも。世界を守るためにも彼女を監禁して、鍵についてのヒントを得ようとした。それまでよ。でも、私たちのしたことは決して許されることではない。それは重々承知しているわ」

 なるほど。事情は分かった。これで、メルディアさんが言っていた、妹の命についての話も理解した。

「なるほど。それなら納得がいきました。拷問については未だに許す気はありません。でも、命を守ろうとしてくれていたのなら、それについては感謝します。でも、もう拷問はしないでください。研究するにしても、本人の了承を得てからにして下さい」

「分かったわ。もうこれ以上彼女には無理させない。それと、貴方にも長い休暇が出ているわ。この先研究が進んで、貴方も忙しくなると思うわ。休暇を楽しみなさい。あ……そうだ、帰る前に6101応接室に寄って行って頂戴。あなたを待っている人がいるわ」

 会議室を出て6101応接間へと向かった。監禁・拷問の裏側にそんな深刻な事情があったと知って、連れ出したことは正しかったのかわからなくなった。もし、連れ出した時にもう一人の鍵と接触していたら?この世界は取り返しのない事になっていたのではないのか?ほんとに今回の件はお互いに非があったな。


「失礼します。四条柊人入ります」

6101のセンサーに手をかざし、扉を開けた。

「四条君。久しぶりね」

「メルディアさん!久しぶりっていっても3日ぶりくらいじゃないですか~」

「あら?そうだったかしら~」

 和やかな雰囲気が広がる。かなり思い詰めていた俺にとっては、なかなかありがたかった。部屋には俺とメルディアさんと……一人の少女と一人の女性。

「柊人君紹介するわね、このちっこいのがエルシス・ゾーディア 私の妹よ!そしてこの巨乳眼鏡がダリアス・メアリー 私の家臣よ~」

 ベリト財閥が男だらけなのに反して、ゾーディア財閥は女が多いようだ。

「エルシス……ゾーディアです」

 かなり声が小さい。照れ屋さんなようだ。ほぼ聞き取れなかったがなんとなくフィーリングで返してみる。

「こんにちはエルシスちゃん!よろしくね!」

「ハイ」

 ちっちゃくてかわいい~!あ、ロリコンじゃねぇからな!包容力のあるお姉さんの方が好きだからな!

「初めまして四条様。今回は私共にご協力いただき誠にありがとうございます!本件でエルシスお嬢が救われたことに加え、ベリト財閥との提携協定も結ぶことができました。この恩義どう返していいものやら。心からお礼申し上げます」

 巨乳眼鏡こと、メアリーさんが頭を下げてきた。でも財閥同士で提携協定なんて、俺なかなかすごいことしたんじゃね?

「四条柊人です!よろしくお願いします!恩義なんて~俺がしたくてしたことですから。むしろ、シルフに自分の居場所があるって感じられたいい機会になったんで、こちらこそ、ありがとうございました!」

 ゾーディア財閥とはこれからも長い付き合いをしていくことになりそうだ。

「では、今日はこれで失礼します。又今度ゆっくり話をしましょう!」

 そう言って6101を出た。すると横から強い衝撃が走った。

「柊人君~!帰ってきてたのね!」

「真白!ぁ~忘れてたわ~」

「ひっどぉおい!」

 泣きそうになっている真白を見るのは実に愉快だ。だってすげぇかわいいんだもん。と、冗談はさておき、こいつはしばらく本部に住むことに……これで、少しは静かになるかな。

「今日から本部住みなんだってな。まぁ、良子さんとかゾーディアさんとかに頼ればなんとかなるだろ。安心しろ、お前の身柄はかの有名なゾ―ディア財閥に保証されてんだ。何も起きやしないさ」

「柊人がそういうなら……毎日来てよね!」

「あぁ~じゃぁな」

 真白と別れ俺は帰路に就いた。てか、いつから真白は“柊人君”から“柊人”になったんだ?まぁそっちの方が嬉しいような、なんか少し残念なような……


 そして色々あって一ヶ月が過ぎた

 毎日会いに行くという約束は残念ながら守られなかったが……

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