第二章 第四話

 洗面所へ行き顔を洗うと瑞穂が起きてきた。

「ふぁ~おはよう、お兄ちゃん~今日はちゃんと起きたんだねぇ~」

「おはよう瑞穂今日はまた早いな、まさか…」

 あわててスマホの画面をみた<7時32分>

「フフ……また遅刻だと思った?でも大丈夫だよぉ~」

「焦らすなよ!で、なんで今日はちゃんと起きてるんだ?」

「それはね昨日帰ってくるの遅くなって、帰ってきてそのままリビングで寝ちゃって、いつもと違うとこで寝たから、違和感かなんかわかんないけど、体が勝手に起きちゃったんだよねぇ~」

「なるほどな……ってホントに昨日は遅かったよな!この不良妹が!」

「な、なんだと!この馬鹿兄貴が!」

「お兄ちゃんに向かってなんだその態度は!」

「たかが2年早く生まれただけだろ!それに昔は……」

「昔はなんだよ!」

「なんでもない!この馬鹿兄貴!」

 そういうと瑞穂は自分の部屋へと戻っていった。

 朝食をすまし、制服に着替えて、いつもより少しだけ早く家を出た。

 終業式の日って、なんだか分からないけどみんな早めに学校きちゃうよね~


「え~それでは、養条学園高等学校第一学期終業式を執り行います。姿勢を正してください。礼」

「おねがいしまぁす」

 終業式がはじまった、さすが自称進学校、少しでも喋っている人がいればすぐに指導が入る。ネットで見たけど、やたらルールが厳しいのは自称進学校の特徴なのだそう……

 いつになれば自他共に認める進学校になるのだろう……

「校長先生ありがとうございました。次は学園長先生のお話です」

 そう、この学校には校長の他に学園長という人がいるのだ。

 養条は幼稚園~大学までの総合学園なので、校長先生達の上に学園長という人がいるのだ。

 学園全体の式典や、卒業式位にしか、普段は出席しない癖に、どうして、今日に限っているんだよ。あぁ。はやく帰りてぇな。

 ちなみに俺は集会とかで話を聞くのは苦手なので、いつもアニメの事か、今ここでなにか起きたら自分が皆を守ってヒーローにという妄想ばかりしている。

 今日はヒーロー妄想でもして時間を潰すか……

 そして、このタイミングで警告を流す。

『注意!この先、痛い発言が飛び交いますが、ただの暇つぶしなのでご容赦ください』

 え?誰に、警告してるのかって?それは、俺の脳内を覗き見ているどっかの誰かさんだよ。よく異能モノのアニメとかラノベであるでしょ?まぁ。そんな感じ。


 学園長先生の話が終わったタイミングで敵さん登場!

 そして動揺するみんなを見ながら、俺は自分を作りあげている元素であるソニックニウム架空の元素の原子を組み合わせて、足にジェットエアル(高速移動するために必要な装備)をつけ、前に高速移動して、手にクリスタルソードを作りあげ敵を倒す。

 そして俺はヒーローに!!


「学園長先生ありがとうござ……」

ドガカァァカァカァアア!

「え……?」

 養条高校の体育館の天井が急に落ちてきた。

「きゃぁぁっぁあっぁああああ!」

 何十人もの生徒が天井に挟まり血だらけになっている。

 先生達が大慌てで駆け寄る。

 生徒達の悲鳴が体育館中に響き渡る。

 そして砂煙の中から二つの赤く光る目が見える。

「どうして……」

 そう、まるで俺がさっきした妄想にそっくりな状況になったのである。

「な、なにが起きたんだ……?」

 そう。ここは現実世界。養条学園一学期終業式の真っ最中……な、はずなのだが……

 生徒たちが柊人の近くの出口の扉へと殺到する。柊人はどうしていいかわからなくなって、その人の波の邪魔になることしかできなかった。

 前ではその人だか、怪物だかわからない生物が応戦する先生達を食い荒らしている。血飛沫がこちらに何かを語りかけてくる。まるで、『にげろ』と言うように。

 生徒の悲鳴は大きくなる一方だ。

 途中で失神して倒れている生徒もたくさんいる。

 まるで地獄絵図だ。

「しゅ……たた……うん…………」

 何かが喋りかけてきた。

 その声に気づき、俺は動転して、パニックしていた、気を取り戻した。

 一度冷静になろう。なにが起こったんだ。

 自分がした妄想が現実になった。

「だったら……」

 ソニックニウムも、もしかしたら。そんな半信半疑な希望を抱きながら、

「体内調整開始・システムオールグリーン・ジェットエアル起動」

 謎の光が柊人の足を包む。少しずつかかとから何かが伸びてくる。

 存在しないはずの架空元素ソニュクニウムが武具を形成していく。そして、人類が作り出した最終究極奥義のうないせっていジェットエアルが起動したのである。

「成功だ!次はクリスタルソード!体内調整開始・システムオールグリーン・クリスタルソード起動」

 左手に謎の光が現れる。その光は長い棒状になり、更に強い光を放ち水色の剣へと変化した。

 その光に反応して、謎の生物がこちらを向いた。

 そして、瞬きをする暇もなくこちらに一直線に突進してきた。

「うわぁぁぁ!」

 謎の生物は柊人へとあたり、生徒たちが密集しているグラウンドへと壁を突き破って飛ばされた。

 痛い。これは、血…………

 それを見て、更に生徒たちの悲鳴は大きくなる。その場は完全に冷静さを失い、収集のつかない事態へと、さらに発展してしまった。

 謎の生物はまたこちらに向かってくる。

 このままじゃ、他の生徒だけじゃなく、自分の命も危うくなる。これが……本当に俺の妄想によって出来たものならば……

 俺は起き上がり、剣を構えた。そして、迫りくる謎の生物に向かって

「光よ集え!!バーニングスラッシュッッ!!!」

 謎の生物は空中で真っ二つに切られ、奇妙な液体を出しながら生徒たちのもとへと落ちていった。

 また更に悲鳴が大きくなり、大量の生徒が失神した。

 そして、すごい音がしたせいか分からないが、近くの警察署の警察たちと消防車がやってきた。

 気付けば装備は消え、跡形もなくなり、再度制服へと身を包んでいた。

「なんだったんだよ……一体」

 そして、生き残った生徒たちは全員家に帰された。

 精神的におかしくなってしまい、その場から、うごけたのは俺だけだったが……

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