第二章「消えた少女は何処へ?」第一話

「お兄ちゃんおかえり~」

「あぁただいま。瑞穂」

「うわぁ!顔傷だらけじゃん!どーしたの?!」

「ちょっとよそ見しててこけたんだよ!」

「ぷっ……でも、それって大丈夫な…の?」

「大丈夫だよ。気にするな」

 このうるさくてうざくて、でも憎い事にモデル並みにかわいいのが四条瑞穂。名字と先ほどの会話からわかると思うが、俺の妹であり、同居している唯一の家族だ。あ、シスコンではないのでご安心を。

「あ、そうだお兄ちゃん!今日お母さんから宅配便届いてたよ~」

「そうか、で、なにが入ってた?」

「ん~まだ開けてないからわかんないや~、そこの机の上にあるやつだよ~。お兄ちゃん開けといて~!」

「あぁ分かった」

 自分の部屋に制服など学校のものを置いてき、一通り傷の処理をして、普段のリラックスモードに突入する体制を整え、再度リビングへと戻ってきた。

 きっと、なんで瑞穂は開けなかったの?【お兄ちゃんと一緒に開けたかった!】とか理由があるの?とみなさんは疑問に思うかも知れない。しかしそれは皆さんが予想するよりはるかにがっかりする理由だぞ。ここ最近瑞穂は学校から帰ると一番に携帯ゲームを起動する。そしてゲームをしながら着替えを始める、そして冷蔵庫から2Lジュースを持ち出し、いつもの場所ソファーへと向かう。さぁ問題です。瑞穂が帰ってからゲームをしなかった時間は何分でしょう!正解は0分です!こんなにゲーム=命みたいなダメダメ人間がゲームを中断してまで宅配物を開けると思うか?受け取っただけでもかなりいい方だと思うぞ。(どーせゲームしながら適当にサインしただけだろうけど…にしてもホント器用だよな……)

 とか言ってるうちに箱の封印は解かれ中から我が母上から……やめておこう。

中には野菜に乾麺、お菓子に果物…と、毎度ながら大量の食品が送られてくる。乾麺やお菓子はまだしも、果物や野菜は傷むからこっちで買うって言ってるのに。懲りない人だ。

 そして、その大量の食品の下に、3つの封筒が入っている。

 俺への手紙と瑞穂への手紙それに一か月分の生活費。

 瑞穂への手紙を瑞穂へ渡すと、珍しくゲームを止めて、読み始めた。

「珍しいなお前がゲームを止めて何かをするなんて」

「あ~そーいえば最近はスマホにがっついてたからね~まぁ昨日でイベントも終わったし~今日からは晴れて自由の身となるのです!」

「なるほど。それで、今日は珍しく宅配便を受けとってくれていたわけか。納得納得……って!おめぇは普段から自由だろうが!まぁいい、早くお風呂入ってこい。飯作ってるから」

「了解なのです!」

「あと、その喋り方やめろ、違和感がすごすぎて気持ち悪い」

「は~い」

 俺はそんな妹に手を焼きながらも、夕食の準備を始めた。

 今日は大量に送られてきた野菜たちを使って野菜炒めだな……


「お風呂から上がりましたぁ~!」

「よし、食べよう!」

「わ……わ、私を食べるなんて!お兄ちゃんは狼さんですか?!」

「アホか…誰がお前なんて…とかいってないで早く席につけ!飯だ!飯!」

 ほんとになんて妹なんだよ……脳内お花畑……(以下略)


「はぁ~」

 自分の部屋に戻った俺は日課である、過去のニュース視聴を始めた。

 悲惨な殺人事件からプロ野球の結果まで、大量の情報を得れたが、自分の過去の記憶にはなにも結びつかなかった。



<7月13日 今日は学校帰りに事故を起こしてしまった。幸いなことにお互い軽症ですんだ。あとお母さんから宅配便がとどきました。  進歩はなし。>

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