94 『史記』とは?
今回は、<史記に登場するいい男たち>を休んで、『史記』とはなんぞやという復習です。カルチャ―の講座は、『史記』を文学として楽しむ手引きというようなものではないので、時々、先生から難しいお話があります。
その間、私は寝ているのではなくて……、(笑)、妄想の世界に突入です。
学生のようにちゃんと聴いていないと試験に出るとか、突然、先生に質問を振られて答えに窮するということも、滅多にありませんので。
ところで、ここで先生の経歴をご紹介したいと思います。
もと大学の教授であることは、講師の紹介に書かれていることですが、あとのことは、先生が講義の合間に挟まれる脱線したお喋りを、私が繋いでみたものです。
だから、正確に欠けるところがあることを最初にお詫びします。
なんと、先生は工学関係の大学に進学されて、初めの就職先は光学関係だったとか。たぶんレンズ製造関係の会社ではなかったのだろうかと想像します。
その会社の通勤途中に昔に作られたという大きな溜池があって。
それを毎日眺めているうちに、昔の人はどのようにしてあの溜池を作ったのだろうという好奇心が抑えきれなくなって。
先生は、会社を辞めて土木関係の大学に再入学します。
そこで溜池を作る技術は昔々に中国からもたらされたものだと知り、中国の歴史を学んでいるうちに『史記』に魅了されて……。
先日、先生よりいただいた本の後付けに「35歳の時に博士号を取得」とありましたから、史記研究の世界では異色というか、遅咲きというか。
でも、回り道をした人のお話は面白く、また人間的にも魅力が増すものです。
先生は時々遅咲きのままである学会のご自分の立場をこぼされることもあるのですが、「だから、私は先生と出会えた」と思っています。
目標に向かって邁進した人のお話を継続して聴く機会があるというのは、70歳を過ぎた今もなんとも表現しがたい喜びです。
……ということで、話をもとに戻します。
『史記』は歴史書であるのか、それとも歴史をもとにした文学書であるのかは、それを研究している学者にとっても私のような聞きかじりの読者にとっても、悩ましいところです。
今回、その疑問に対して、初めて先生がレジュメとして文章にまとめたものを下さりました。
要約しますと、
①史記は、人間の事績(成し遂げた業績)によって、歴史を叙述した
②司馬遷は叙述の中に、現在の由来となる歴史の盛衰と成敗の道理を考えた
③李陵の禍のあと、著述を残し、歴史の教訓を後世に伝えることを強く願った
ゆえに、「史記は歴史書でも文学書でもなく、思想書である」となります。
学会でも歴史書・文学書・思想書という派に分かれており、それぞれにご自分の信じる道で、侃々諤々となかなかに大変な議論を重ねているようです。
しかしながら、田舎のカルチャーセンターの一聴講生としては、その3つのどちらでもよく。ただただ、史記がその存在と面白さで、私の妄想を限りなく刺激してくれればよいと考えています。
学者である先生には、絶対に言えないことではありますが……。 m(_ _)m
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