79 昔々の同人誌活動の思い出 ≪5≫
実を言うと、純文学系の同人誌に長く在籍していながら、私は純文学が書くのも読むのも好きではなかった。
同人雑誌の締め切りにあわせて仕方なしという感じで書いていた。
そしてこれも正直に書いてしまえば、仲間の書く純文学系の小説をおもしろいと思ったことはほとんどない。合評会のために仲間の書いた純文学系の小説を読むのは、苦痛で退屈であることが多かった。
当時、私が好んで読んでいたのは欧米の女流作家の翻訳ミステリー小説だった。
ルース・レンデル、パトリシア・コーンウェル、P・D・ジェイムズ、そして国内だと桐野夏生、高村薫……、かなり昔の作家さんばかりですねえ。
そうそう、同人誌の締め切りに合わせて短編小説を書く時、私は向田邦子さんの『思い出トランプ』を読んでから、鉢巻を締めたものだ。
普通の生活をしている人々のちょっと普通でない日常を書いたこの『思い出トランプ』は、芥川賞ではなく直木賞を受賞している。
だから、純文学ではなくてエンタメ系よりの小説だ。
あっ、もう1つ思い出した。
私はほとんど男性作家の書いた小説は読まなかったのだけど、阿刀田高さんが大好きだった。
阿刀田さんの小説はほとんど読んだ。
それが高じて、阿刀田さんの選考するショートショート賞に、普通の主婦のちょっと変な日常というものを書いては応募して、何度か入選した。
あっ、またまた思い出した。
向田邦子さんと阿刀田高さんが大好きだったものだから、同人誌での私のペンネームを、途中から、お二人の名前を足して二で割ったような感じのものに変更したのだった。
カタカナも入れて、自慢したくなるようなかなり洒落た美人名だった。
カクヨムで初めにつけたペンネーム・
明千香というペンネームが閃いた時、「おう、これだ!」って小さくガッツポーズしてしまった……。
いろいろと思い出していたら、ワクワクしてきた。
自分の同人誌活動、思い出すのも恥ずかしい黒歴史ばかりだと思っていたのだけど、けっこう面白がって楽しんでもいたのだなあ。
このエッセイを書いてよかったと思ってしまった。
本当は、今回は、純文学小説とエンタメ小説の違いについて真面目に書こうと考えていたのに、思い出話に花が咲いて大きく脱線してしまった。
次回に続きます。
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