67 ファンタジーの世界は烏が大流行り ≪4≫



 第6巻を買ったばかりの白川紺子さんの『後宮の烏』。


 ネット上の噂では、来年の春くらいに発売されるのではないかという、第7巻で完結となるらしい。


 また、文庫本1冊が15万字前後と聞いたことがあるので、7巻で完結ということは、『後宮の烏』は100万字の大長編ファンタジー小説となる。





 小野不由美さんの『十二国記』も長い長い大長編中華ファンタジー小説であったけれど、あれはそれぞれに独立した12の国々で起きる物語りだった。

 長い物語りとなっても当然だと思う。


 しかし、『後宮の烏』はたぶん、主要登場人物は最後まで同じだと思われる。

 第6巻と、完結編だと噂される第7巻を読んでいないので、はっきりとは言い切れないけれど……。


 ……ということで、今回は、魅力的な長編小説であり続ける『後宮の烏』の構成について考察してみたい。





 ② 長編小説としての王道の構成



『後宮の烏』は、後宮に住みながら真っ黒な衣装をまとった夜伽よとぎをしない烏妃と呼ばれる妃が、皇帝の助けを借りながら不思議な術を使って、後宮で暮らす妃や宮女や宦官の小さな困りごとを解決していくことから始まる。


 困り事というのは、失せもの探しであったり、夜な夜な現れる幽霊退治であったり、殺人事件の犯人捜しというのもあったかな……。


 それが3巻くらいまで続くので、「これは、皇帝と烏妃のコンビが探偵となって、毎回、後宮で起きる事件を解決するお話だろう」と、初めは思っていた。


 そのうちに、皇帝が烏妃の境遇に同情し始め、あれやこれやと烏妃の世話を焼き始めるので、「あっ、じれじれのきゅんきゅんラブも始まるぞ」と期待していたのだけど……。


 そういう読者の期待は裏切られる。


 皇帝と烏妃が、後宮の妃や宮女や宦官たちの小さな困りごとを解決していくほどに、闇に隠されていた『烏妃の秘密、王朝の禁忌、神々の因果……(第6巻の帯封より)』が、白日のもとに晒され始める。

 

 そこのところのじわじわ感が、本当に上手い!


 何よりも中華ものは、読みなれていない人にとって、登場人物の名前が覚えにくいという欠点があるのだけど、それもまた、困りごとを解決するたびに登場人物が少しずつ増えるという感じで、そこのところの配分も上手いなあと思ってしまう。




 でもただ、どうだろうか……。


 私としては、『烏妃の秘密、王朝の禁忌、神々の因果……』の中で、『神々の因果』はちょっと手の広げすぎではないかと思うところがある。


 読解力の乏しい読者のいらぬお世話だとは思うのだけど、作者の白川紺子さんはどう纏めるのだろうか。

 興味津々だ。


 第6巻と第7巻を続けて読んだほうが、『神々の因果』を理解しやすいのではないかと思い、現在、第6巻を買ったものの読むのをためらっている状況。


 それとまったくじれじれのきゅんきゅんがない中華ファンタジー小説というものも、どういうものかなあ……。


 若い男とは思えない皇帝のあまりの淡白さに、ちょっと違和感がある。

 ラブラブを書くと、壮大な雰囲気が壊れるのだろうか。



             (続く)






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