63 あさのあつこの『弥勒シリーズ』が大好きだ ≪7≫
≪6≫からの続きです。
……ということで、「自分の書きたい中華ファンタジー小説とは、どういうものか?」という疑問を抱きながら、本屋さんをうろうろしていると……。
中華ものの書棚の横は、時代小説の書棚ということが多くて、ついにこの私が時代小説を手に取ってしまったのだ。
ところで、私は若い時から、欧米の翻訳小説が好きで、そればかり読んでいた。
毎年の「このミステリーがすごい! 海外編」から選んで、気に入るとその作者の作品を踏破した。
一番好きだったのは、イギリスの女流ミステリー作家・ルース・レンデル(バーバラ・ヴァイン)だった。
彼女の作品で日本で出版されたものはすべて読んでいると思う。
日本人作家で唯一読んだのは、桐野夏生さん。
私は本は文庫でしか買わないのだけど、桐野夏生さんの『OUT』は、ハードカバーで買って、本箱の一番上に飾っていた。
余談だけど、白麗シリーズ②に登場した妖婆・亜月の逞しさは、『OUT』の主人公・香取雅子かも知れない。
そして香取雅子は最後に海外に逃亡するのだが、それを馬車で安陽から脱出を試みる亜月に重ねてみた。
そういうことで、私は時代小説とはまったく無縁の読書生活を送って来たのだ。
でも、なんとなく手にとって読んでみたら、これが新鮮でおもしろい!
特に、直木賞作家の書く時代小説は安定のおもしろさだ。
もし私が中華ファンタジー小説を書こうなんて思っていなかったら、時代小説とともに安定の老後に突入していたかもしれない。(笑)
でも私は、武士の矜持とか岡っ引きを取り巻く市井の人情とか遊郭の艶話を書きたいのではない。
私の書きたいのは何度も言うけれど、中華ファンタジー小説。
そして、そうこうしているうちに、とうとう、さのあつこさんの時代小説『弥勒シリーズ』に出会った。
『弥勒シリーズ』には欠点がある。
15歳で剣を捨てた遠野屋の清之介がその後まったく鍛錬しなくても、凄腕の剣士であり続けること。
同心の小暮信次郎の謎解きが、あまりにも神がかってること。
でも、そんなことは見て見ぬ振りができるほどに、清之介と信次郎と2人を取り巻くその他の登場人物たちは魅力的だ。
そういう設定が、古代中国の歴史や語彙にまったく自信がなく、そこのところを登場人物のキャラ立ちでごまかすしかない、自分の書く中華ファンタジー小説にぴったりと当てはまった。
……ということで、A賞候補であり詩人であった主催者の元で、ながく純文学修行に励み、読んできた本は欧米のミステリー&ノアール小説と桐野夏生で……。
そしていま、あさのあつこさんの『弥勒シリーズ』に心酔してしまった私が書く中華ファンタジー小説って、これからどうなるんだろうと自分でも思ってしまう。
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