45 一夫多妻(美女は財産・Ⅱ) ≪7≫



 古代中国では、<美女>は<物>のように後宮に集められストックされた。


 その中で皇帝の目に留まった<美女>は妃となったが、時に応じて<美女>たちは、臣下への褒賞となり、また他国への献上品ともなった。





 後宮を舞台にした華流時代劇ドラマや小説では、後宮に上がった一人の女性がいろいろな困難を乗り越えて皇帝の愛を勝ち取り、男の子を生んで皇后になるというストーリーが多い。


 そのために、後宮の<美女>が、褒賞品や献上品となっていたことにはあまり触れていない。


 ただ、長い間中国に従属していた韓国の朝鮮時代には、毎年の中国への献上品の中に<美女>が何人というのがあって、<美女>を集めるのに苦労していた様子が、ドラマの中で描かれていたりする。


 また、献上された朝鮮の<美女>が中国の皇帝の皇后になったということもあったようで、これは韓流時代劇ドラマ『奇皇后』として有名だ。





 ところで、№27の『生贄にまつわる古代中国の故事』と同じように、どこで仕入れた知識だったのか、その出典は何だったのか覚えていない、後宮の<美女>が絡んだお話を1つ。




 昔々の美女三千人の後宮では、絵師に描かせた似顔絵で<美女>を管理していた。


 それで、<美女>たちは自分を美しく描いてもらうために絵師に賄賂を渡していた。しかし、賄賂を渡すことをよしとしない<美女>がいて、絵師に恨まれた彼女は醜く描かれてしまう。


 ある時、どこか遠くの国に<美女>を献上品として送ることとなった時、皇帝はたくさんの似顔絵の中から美しく描かれていないその<美女>を選んだ。


 そしてその<美女>が献上品として国を去る日に、彼女の本当の顔を見た皇帝は、彼女が絶世の<美女>であったことを知り悔やむ。




 そのお話の趣旨は、容姿に拘らない彼女を<婦女子の鑑>として讃えるものだ。

 しかしながら、今の時代にこのお話を道徳として語ったら、大変なブーイングものだろう。


 


 





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