42 一夫多妻(妃のスペア) ≪4≫
≪31≫の『皇帝の食卓から思うこと』で、全部は食べられそうにない皇帝の贅沢な食事にも、それなりの意味はあると書いた。
この時のように、ずっと疑問に思いながら華流時代劇ドラマを見たり中華小説を読んでいると、「ああ、そういうことだったのか!」と、すとんと腑に落ちることがある。
古代中国の王族の結婚でも、そういうことがあった。
前回でも書いたが、古代中国においては王族の妃として、他国の姫を迎えることが多かった。
結婚の話がまとまると、深窓で大切に育てられた姫様は馬車に乗り、長い行列を従えて、他国の皇太子とか皇帝のもとに嫁いでいく。
そのとき、妃になるお姫様に、もう一人の同じくらい地位のある若い女性が同行する。妹であったり、従姉妹であったりすることが多かったようだ。
他国での新しい生活はあまりにも寂しいので、妃の話し相手になるのだろうと、華流時代劇ドラマを見ながら、私はずっと思っていた。
妃が新しい生活に慣れれば、自国に戻って結婚するか、それとも新しい国で新しい伴侶に出会って結婚するのか……。
しかし、何作かドラマを見ていて、私はやっと気づいた。
なんと、彼女の立場は、妃のスペアだったのだ!
妃が病気などで皇帝と夜伽ができない時、またはなかなか子どもができない時、彼女は妃の代役となる。
代役を務めて、もし男の子でも出産すれば、仕えていた妃との立場は逆転する。
あるドラマで、そのスペアの女に自国の実家から、「妃など差し置いて、はやく皇帝の寵愛を獲得しろ。何をぐずぐずしているのだ」と、何度も催促の手紙が来るシーンがあった。
そしてついに、病気で伏せているところに来た皇帝に、「このままお帰りなられるのでは、申し訳ないので、〇〇と夜伽を」と、妃が言う。
口ではそう言いながら、「いや、今日はおまえの見舞いに来ただけだから、このまま帰る」と言ってもらうのを期待している、妃の胸の内がその表情に出ていた。
しかしながら、やっと妃の許可が出たと皇帝は好色そうに笑い、スペアの女はやっと出番がめぐってきたと、うつむいたままにやりと笑う。
思い出しながら書いていても、女性として腹の立つシーンだった。
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