39 一夫多妻 ≪1≫




 古代中国の婚姻形式は、言わずと知れた一夫多妻だ。


 しかし、幸か不幸か、現代の日本に住む私は、一夫多妻を経験していない。

 それで、自作の中華ファンタジー小説『白麗シリーズ』を書くにあたっては、一つ屋根の下に妻が何人も住むという状態を、あれこれと想像して書くしかない。


 しかし、夫一人に妻が何人もいるという状態を、あれこれと想像するのは楽しくない。それは、たぶん自分が女性であることも関係していると思う。


 それで、『白麗シリーズ』①の慶央編の主人公である荘興は、妻を一人に設定した。




 あっ、いや、違った。


 彼の美しい二番目の妻は、もう一人の主人公となる英卓を生んだあと、夫を恨みながら死んでいったのだった。その後、正妻とその実家との揉め事を怖れて、荘興は新しく妻を娶らなかった。

 ただし、妓楼になじみの遊女はいる。


 長く書いていると、初めころの設定を忘れている…。(笑)







 古代中国を舞台にした小説にリアリティ感を出そうとすると、ある程度の権力と金がある男に妻がたった一人というのは、不自然な設定ではないかと思う。


 しかし、何人もの妻に名前をつけて、なにかことが起きるたびに、その妻たちのそれぞれの思惑を書くのは煩わしい。

 それに、妻が多ければ子どもも多いことだろう。


 荘興は子どもが三人だったので、それぞれの子どもに役割を持たせて描き分けることが出来た。これが十人とか二十人だと、大変だ。





 ところで、私は<カクヨム>で小説を書くまで、恋愛小説ジャンルに中華ファンタジー小説というのがあって、若い女の子たちに読まれているということを知らなかった。


 正直言って今でも、皇帝に見初められて後宮に入ることが、歴史小説ならばともかくとして、恋愛小説として成立することが不思議でならない。

 いくら金と権力があるといえども、大勢の妻の一人となることが、読んでいて胸がときめくほどいいものなのだろうかと思う。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る