32 宦官 ≪2≫



 自作小説『白麗シリーズ』②は再び宮中が舞台になる予定。

 中華ファンタジー小説で宮廷が舞台となれば、お妃で溢れる後宮とそこで働く去勢した男性使用人である宦官が欠かせない。


 調べてみたら、宦官という制度は古代エジプトやローマ帝国や古代メソポタミア、それからトルコのオスマン帝国にもあるので、古代中国から発祥した中国固有の制度ではないようだ。

 どこの国でも、王様がハーレムを持つためには必要だったのだろう。





 しかし、漢字を筆頭にいろいろな中国文化を吸収しながら、この宦官制度は日本には定着しなかった。

 権力者が多くの妻を持ったのは日本でも同じでありながら、世界の歴史から見て、宦官制度がないほうが特殊だというのだから、日本人の私としては驚きだ。

 

 日本に宦官制度が定着しなかったのはなぜだろうと、想像たくましく考えてみた。


 やはりこれは、人を家畜のごとく扱う奴隷制度が関係しているように思う。


『異教徒は殲滅せよ!』という言葉が、キリスト教にもイスラム教にもある。

『聖戦』『ジハード』というものがある。


 古代や中世においては、信じる神や風俗風習、そして話し言葉の違う他国民・他民族というのは、自分たちと同じ人間という感覚ではなかったようだ。

 そのために、戦争などで捕らえた他国民や他民族の捕虜は家畜と同じように売買し、家畜のように所有した。

 

 日本は小さな島国であるから、話す言葉も信じる神さまも似たり寄ったりで、戦争はあれど、捕虜を家畜同然の奴隷としては扱えなかったのではないかと思う。


 また、日本人は牛・豚・羊などの家畜を飼って肉を食べるということをしなかったので、去勢という手術方法が認知されなかったのではと思う。

 よい肉質を持つ雄と雌をかけ合わせなければならないので、また大人しいほうが飼いやすいということもあって、種つけ雄以外は去勢する必要がある。





 家畜だと思わなければ、人を去勢しようとは思いつかないだろう。


 そしてその後、去勢は罪人の処罰の1つの方法にもなり、また去勢した男の子は高く売れるということで、奴隷商人の金儲けの手段ともなっていく。また、仕事を得て生きていくために、自らを去勢するものも出てくる。


 



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る