30 『史記』と今どきの大学生 ≪2≫



 年明けて、パソコンで<アマゾンプライム>が見られるように設定した。


 私の執筆スタイルは、パソコンのワードを開いた状態で、縫い物をしながら文章を考え、頭の中でまとまったらワードに打ち込むというもの。

 しかし、語彙の検索ついでにあちこちのサイトを覗いてしまい、無駄な時間潰しをしてしまうことが多い。


 これで、<アマゾンプライム>で映画やドラマが見放題となったら、どうなってしまうのだろうという不安はあるけれど……。




 ……ということで、初アマゾンプライム視聴は、実写版『キングダム』。

 映画館でも観ているので、二度見となる。


 原作コミックも、『史記』の講座に通う少し前に、ぶっ通しで45巻まで読んだ。

(その後は、戦いのシーンばかりで、読み続ける気が削がれたまま……)


『史記』の講師は定年退職したばかりの元大学教授だったが、若い学生を相手にしていたせいか、『キングダム』をご存じだった。

 それである日の講座は、『キングダム』の話題で盛り上がった。


 盛り上がった最後に先生が言われた。


 ある年の新学期の最初の授業のこと。

 一人の学生が勢いよく手を挙げて、「あとで、質問にうかがってもいいですか?」と言った。


 「今年度の学生はやる気がある」と、嬉しく思いながら、先生は学生が来るのを待っていたそうだ。


 研究室に入って来た学生は、真面目な顔をして言った。

「『キングダム』の主人公の信のキャラクターについて、先生はどう思われますか?」


「最初の授業で、その質問とは…」


 先生はそのあと何も言われなかったので、学生になんと答えたのか、受講生の私たちは知ることは出来なかった。

 

 それにしても、『史記』の研究に人生を奉げた先生に、おじさんとおばさんの受講生ばかりだけれど、誰もそのような質問はしないなあ……。




 映画『キングダム』の続編が撮影されているとのこと。

 楽しみだ。

 願わくば、コロナ禍の収まった映画館で観たいと思う。











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