20 拱手(きょうしゅ)と揖礼(ゆうれい) ≪1≫


 

 古代中国の礼は手の形とお辞儀の角度でいろいろと変化があり、またその所作も美しいですね。

 華流時代劇ドラマを見る楽しみの1つでしょうか。


 最近では、密教の印を結ぶような手の形の拱手を、華流時代劇ドラマで見ました。

「そんな拱手もあるのかな?」と思ったのですが、ファンタジーということで新しく考案されたものかも知れません。


 最近の華流時代劇ドラマでは衣装も髪型も凝ってきて、ドラマを見るだけだとうっとりと美しくていいのですが、中華風ファンタジーを手探りで書いている立場としては、頭が混乱して困ります。





 ところで、中国式の礼としては<拱手>しか知らない私は、自作の『白麗シリーズ』の中での礼は、<拱手>と<平伏>しか使っていません。


 <拱手>とは、胸の前で握った片手をもう一つの手で包む、礼の形です。

 華流時代劇ドラマを見ていると必ず出てくる礼です。

 <拱手>は、(きょうしゅ)と読みます。(こうしゅ)とも読める字ですが、(きょうしゅ)が正しいようです。


 <平伏>は、文字通りひれ伏すです。

 これは、椅子に座る生活様式では必要のない言葉と思われますが、身分制度の厳しい時代では、床や地面に土下座して頭を地面につけるという場面は、書いていてけっこう多く出てきます。


 それで、立っての挨拶する場面では<拱手>、座っての挨拶する場面では<平伏>と、私は作中で使い分けることにしました。


 そうそう、<拱手>だけでは雰囲気が出ないと思えた時は、<拱手>して深く頭を垂れたとか書き足します。

 <平伏>では、床に頭がつくほどにとか、地面に頭をこすりつけたとか…。


 <拱手>と<平伏>の2つで書き分けておれば、中華風ファンタジーでの礼の描写としては充分だろうと思っていました。


 



 ところが、最近、白川紺子さんの『後宮の烏』を読んでいましたら、頻繁に<揖礼(ゆうれい)>という言葉が出て来ていました。


 これまで中華ファンタジー小説をあまり読んできていない私には、<揖礼>は初めて知る言葉です。

 それで、「これはちょっと、中国式の礼について、調べてみようか」と思ったわけなのですが、これがとんでもなく深い問題となってしまいました。



 次回に続きます。


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