19 文字(漢字)に思う…… ≪1≫



 『史記』の講師は、中国の古墳や遺跡から出土する竹簡に書かれた文字を研究している、大学の先生だった。

 それで、竹簡の写真をたくさん見せてもらった。


 テレビの華流時代劇ドラマの小道具としてよく見る竹簡は、幅が3~5センチくらいで、書かれている文字(漢字)も一文字一文字の間隔を広くとって大きい。

 一列に並ぶ字数は、5~7文字くらい。

 例えていうなら、漢詩が書かれているような感じだ。




 だが、古墳や遺跡から出てくる実際の竹簡はそうではない。


 幅は2センチほど。

 想像する以上に細いです。


 縦の長さについても、先生から教わったけれど忘れてしまった。

 まあ、人が広げて読みやすい長さとなるので、これは華流時代劇ドラマに出てくるものと同じようなものだと思う。


 この縦の長さというのが時代とか国によって違うらしい。


 はっきりとは覚えていないのだが、2種類あると先生は言っていた。

 ということは竹簡って、古代中国全土において、かなりきちんと統一された規格品なのだ。

 古墳などから出土される竹簡は、そのほとんどがお役所の記録や大切な書簡なので、規格品である必要性があったのだろうなと想像する。

 そもそも字が書ける人って、ほんの限られた階級の人々だったことだろう。




 そして書かれている文字(漢字)なのだが、楷書のように一字一字がはっきりとは書かれていない。書く人の癖のにじみ出たそれはそれは小さな字だ。


 いまの私たちが、江戸時代に筆で書かれた手紙を見るような感じかな。

「これは、○○という漢字」と、先生に説明されても、わかりづらい。


 2センチ幅に二行ともなると、ミミズが這ったというよりも、素人には黒いイトミミズが這ったように見える。

 これがまた擦れていたり汚れていたり。




「テレビドラマの竹簡は、実際と全然違う。ドラマのぐるぐると巻いた状態の竹簡を見ると、まるでまきのようだ」と、先生がよく嘆かれていた。


 そして、あの膨大な長さに思える『史記』だが、実際に竹簡に書かれると、脇に抱えて運べるほどのものとなるらしい。



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