12 衣装についてまじめに勉強します! ≪3≫


 私は空想癖があるので、自作小説『白麗』シリーズを書くにあたって、登場人物の衣装についてもいろいろと考えてみた。


 古代中国が舞台ではあるけれど、すでに麻・綿を栽培したり蚕を飼ったりして糸を紡ぎ、機を織って布を作っている。織り機の大きさは人の手の長さに関係してくるから、織りあがった布の幅は40センチ前後かな。


 40センチ幅の長い布で、無駄なく人体をまとうとなれば、真ん中に穴を開けての貫頭衣か、後ろはそのままで前の真ん中を切り開いての打ち合わせ型となる。

 どうやら、古代中国の人は、貫頭衣よりもこの着物ふう打ち合わせ型を好んだようだ。切り開いた前身ごろに別布(おくみ)をつければ、より深い打ち合わせとなり、帯を締めれば着崩れすることもない。

 余談だけど、着物ふう打ち合わせ型は、重ねて着た時に襟元を美しく演出できるので、首飾りは必要なくなるような気がする。


 たぶん、初期は男も女もこの着物ふう打ち合わせ型の衣装1枚だったのだろうと思う。そして、そのうちに、上着の丈を短くして、下に男はズボンを女はスカートをはくようになった。


 ところでこのズボンという衣装の形は、これは人類の歴史に残る発明品であるらしい。中国の北の騎馬民族から、世界に広がったらしい。なんかそんなことを聞いたことがあるのだけど、記憶違いであったなら、ごめんなさい。

 昔々は、布は貴重品であったろうから、1枚の布を無駄に切り刻むことなく使うことは大切な問題であったと思う。そして、なるべくいろんな体格の人でもそのまま着られるということも大切だったことだろう。ズボンという形は、その考え方に反するのだ。


『白麗』シリーズの時代は、それから時は過ぎて、機織りや縫製の技術も進歩し、衣装の形がいろんなバリエーションを持ち始めたころを設定している。人々の間に貧富や身分の差が出来てきて、着るものであからさまな身分の差を表すようになった時代だ。なんとまあ、その頃になると、身分によって、身につけてはいけない衣装の形とか衣装の色なども決められるようになったのだ。皇帝の衣装に使われる黄色がその最たるものだろう。


 今の時代の感覚で考えれば、身分によって使ってはならない衣装の色があるというのもひどい話だが、袖や裾が引きずるほどに長いとか、何枚もの重ね着とか、何重ものヒダのあるロングスカートとか。あれでは食事や排泄などの日常動作は、介助がないと出来ない。常に下僕や侍女を侍らせて、下品な話だが用を足せばお尻まで拭かせていたのだろう。


 衣装に求められることは、寒さが凌げて動きやすさが一番だと思うが、人の欲望の暴走は、時にとんでもない方向に突っ走る。





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