11 敬称「……どの」に別れを告げる



 中華ファンタジー小説を書くならではの悩みはいろいろあるけれど、敬称もその1つではなかろうか。


 敬称とは?

 ① 人名や官職名などの下につけて、敬意を表す語。

   例 「……さん」「……様」「……どの」「……妃」


 ② 相手または相手方の事物について、敬意を表す言い方。

   例 「貴兄」「貴殿」


 ③ それから、愛称というものもある。

   例 「……ちゃん」




 中華ファンタジーの舞台設定は、古代中国。


 そこには、宮廷・貴族・軍属という身分制度がある。

 また人々は平伏土下座し、男たちは刀を携えている。

 日本の時代劇ものと同じような雰囲気だ。

 

 それで、自作小説の中でも、「……どの」という敬称を多用した。

 おお、なんか、<時代ものらしい雰囲気>が出ている!


 しかし、この<時代ものらしい雰囲気>というのは、なかなかに曲者だった。

 特に敬称に「……どの」を多用すると、それにふさわしい言葉使い・礼儀、しいては服装とか室内設えとか、いろいろなものに気をつかわなくてはならなくなる。


 そのうちに、ストーリー展開に頭を悩ますよりも、<時代ものらしい雰囲気>作りのほうに頭を悩ます時間のほうが多くなった。


そのうえに、付け焼刃的な自己流<時代ものらしい雰囲気>は、「間違っているんじゃないか」という思いに常に捉われているから、書くという行為そのものにも自信がなくなってくる。


 これはいかん……。

 楽しく書く、エタらないという、書き始めた時の<誓い>に反する。


 そうだ、「……どの」という敬称をなるべく使わないよにしよう。

「……ちゃん」「……さん」「……さま」にしてしまおう。


 まあ、身も蓋もなく結論を言ってしまえば、いかに時代考証から逃げ切るかということなんだけど。



 追記


 昔の中国では、貴族・役人は、名前ではなくその官職名で呼びあったらしい。

 これは、ますますいかん……。

 古代中国における役職名なんてものを調べる時間がもったない。

 私には、ストーリー展開を考える時間のほうが大切だ。

 




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