7 中華ファンタジーにおける時代考証 


 私は、カルチャーセンターで中国古代史『史記』の講座を受け始めて、二年半になる。


 どうして急に『史記』に興味を持って通い始めたのかとか、小説といえば現代物の純文学系ばかりを書いていたのに、『史記』の講座に通い始めて一年目に、中華ファンタジーを書こうと思い立ったのかとは、長い話となるので、これから少しずつ書いていく予定だ。



 

『史記』の講座の先生は、大学を退職されたばかりの名誉教授。

 専攻は、司馬遷が書いた『史記』の内容を、現在の中国で盛んにおこなわれている遺跡の発掘調査の結果と照らし合わせるというものらしい。


 だから今でもしょっちゅう中国に行かれている。

「昨日、中国から戻ってきました」ということもあるし、この春から夏にかけては中国の大学に半年ほど招聘されていたので、講座もお休みだった。


 ……と、講座の内容や先生から聞いた話などもこれまた少しずつ書いていこうと思っているのだが、本題の『中華ファンタジーにおける時代考証』について。



 

 実際に中国古代史について学んでいると、正確な時代考証というものが壁になって、中華ファンタジーなんて書けないものだと自分でも思っていたが、なんとこれがまったくの逆となってしまった。


 講座で、「以前はこのように思われていたが、最近になって出土した竹簡に書かれていることを解読すると……」という先生の前置きを講座の中で何度も聞かされていると、時代考証にこだわることが、学術論文でないファンタジー小説においては、だんだんと重箱の隅をつつく行為に思えてきたのだ。


 出来の悪い生徒である私は、「今わかったそれも、いつかは違っていたということになるかもしれない」と、教室の隅でついつい考える。


 時代考証は、それに一生をかけて研究している人たちがいるのだ。素人が楽しみで書いているファンタジー小説にそれを持ち込んで、ああだこうだと言ったところでどうなるものでもない……と思う。






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