第2話 好き
自分の気持ちを自覚しているような、そうでないような感覚で次のライブはやって来た。
今日のイベントは、いつもよりお客さんが入っていた。出演者も多く、ちょっと気だるい空気になってきた。
もう少ししたら帰ろうかな、と思っていたら圭くんを見つけた。
女子と仲良く話している。仲良く、というのは、至近距離で話しているという事。
女子の方は、圭くんにボディタッチをしている。
その女子は早苗さんという。よくライブに来る子で、圭くんと同じB大学だ。
肌の露出が多めのファッションをしている。顔も綺麗な子だ。
今、私は嫉妬している。圭くんが、好きなのだと思った。
「亜水、ああいうの嫌いでしょ?」美沙子が云った。確かに苦手なタイプだ。
一度打ち上げで、早苗さんと一緒になった事がある。そこで色情ぷりを拝見した。
B大学はこのライブハウスの近くなので、早苗さんの家も比較的近いのだろう。
早苗さんは、いつもお酒を飲んでいる。
美沙子の彼氏がB大学なので色々聞いた。
ライブハウスに来るB大学の女子は、この界隈で「相手」が回っているらしい。
女子の率が低いせいもあるだろうが、此処にいるほとんどのB女が「誰と誰の元カノ」だそうだ。
早苗さんはノリが良くて、愉しい事にどん欲な感じがする。いつも隣に男がいる。
愉しい事がしたくて、早苗さんの周りに人が集まるのだろう。
私には決して無いものをたくさん持っている。
本当は、少し羨ましい。
圭くんも、誰かの元カレなのだろうか。大学生だし、そうだよね。
こんな事は考えても仕方がない。どうせ私は何も出来ないのに。
けれど月に一~二度でも会える喜び。会えるだけ。私からは何も、行動出来ない……。
倫太朗くんとは、ライブハウス以外でも遊ぶようになった。
倫太朗くんも、早苗さんとは中々仲良しみたい。
もしかして倫太朗くんも過去、早苗さんと……?
少し気になっている。私に優しい倫太朗くんは、他の女子とも仲良しだ。
けれども早苗さんへの態度は少し違う。どちらかというと、男子相手のような態度をとっている。多分過去に特別な関係にあったのではないだろうか。
でもやっぱり私は圭くんが好き。圭くんとは話していて、愉しい。
圭くんと、映画の話をした。私は物語の構成についてくどくど話すタイプだけれども。
圭くんは、音楽の入るタイミングと画像の美しさ、見せ場の綺麗さをピンポイントで話した。
こりゃ、私より圭くんと話したいと思うわ、誰でも。
そう思って、胸が熱くなった。
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