ふんわり女とすっきり男

青山えむ

第1話 予感

 大学二年になった頃、同じA大学で友人の美沙子にライブハウスに誘われた。

 美沙子の彼氏のしょうくんがバンドをやっていて、そのライブが最初だった。


 私は大学の近くで一人暮らしをしている。

 実家は県内なのだが、家族仲が最悪なので大学進学を口実に実家から逃げ出した。


 実家では両親、長兄とその嫁、私の姉が一緒に住んでいる。長兄と姉の喧嘩がひどくて逃げだした。

 姉は大企業に勤めていて、結構な給料を貰っている。実家にも結構な額を納めているらしく、中々の権力をふるっている。


 一人暮らしで気楽に過ごせるかと思ったけれども、夏休みや正月は実家に帰らなくてはならない。とても嫌な空気だ。

 今からこんなに仲が悪くて、葬式なんか出たらどうなるんだろう。私は実家の事を考えるといつも胃が痛くなる。


 そんな時に美沙子に誘われた。気分転換にいいかな、と思っていたら予想以上に愉しくて、今では月に一~二度ライブハウスに行っている。


 ライブハウスでは毎回顔を合わせるメンツがいる。打ち上げにも時々参加して、仲良しの子が増えていった。


 ライブハウスに来る女子は、垢ぬけている子が多い。

 流行の形のワンピースやズボン、小物使いもお洒落な子が多い。

 バンドTにデニムというシンプルな服に、さらりとブランドの靴を履いている子もかっこいい。


 この中で、ふんわりしたスカートやゆったりワンピースファッションの私は、ちょっと浮いていた。

 一緒に行く美沙子がお洒落だったので、何となく心強かった。


 この頃、よく顔を合わせる男子がいた。倫太朗りんたろうくんと圭くんだ。二人ともB大学の学生だ。


 倫太朗くんは気軽に話しかけてくれて、いつも笑顔だった。連絡先を聞かれた時、当然のように教えた。

 圭くんは考え方が独特で、返答がいつも新鮮で面白い。常に冷静で、時々自分が下らなく思えるほどだ。


 私は、圭くんが好きかもと、思い始めていた。

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