第3話 強敵出現!?

3

コウタは数式を見ると困惑した表情を浮かべた。


「なにこれ」


その数式は、どれも小学生レベルの引き算や足し算であった。そして周りには小銭が散らばっていたが、それは彼らが知る小銭とは色も大きさも少し違っていた。


「これ、お金かな?」


ナギは慌てて小銭を手に取り、コウタに問いかける。


「確証は持てないけど、でも数字書いてあるしそうなんじゃない?」


二人は突然目の前で起こった不思議な光景に衝撃を受け、思考を奪われていた。


「でもコウタが何かいったらモンスター爆発したよね?ね?」

「何ていったの?」「なにが起こったの?」


ナギは矢継ぎ早に質問を投げかけた。

コウタは先ほどの場面を思い出して身震いした。モンスターの姿は明らかに異形であり、この世のものとは思えなかった。


「いや、確か…モンスターが何か言っているように聞こえて、それが計算式のように聞こえたんだ。だからよくわからなかったけれど、頭の中で計算して答えを口にしたらこんな風に。俺も驚きだよ。いったいどうなっているんだよ…」


何かおかしな世界に迷い込んでしまったことを、彼らはこの時再認識した。

状況を理解できないままではあったが、とりあえず落ちていた紙切れと小銭をポケットに入れ、恐る恐る道を歩み始めた。ナギは常にコウタの腕にしがみつき、あたりをキョロキョロと見回していた。しばらく歩いていたが、いったいどのくらい進んだのかわからなくなるほどに周囲の風景は不変であった。荒地が延々と続き、分かれ道もなかった。それからどのくらいの時間が立っただろうか。二人は初めて分かれ道にたどり着いた。


左に村あり

右にモンスターの巣窟あり


分かれ道にはこのような看板が建てられていた。

それまでコウタの腕にしがみついていたナギは看板を見て安堵の表情を浮かべた。


「よかった。とりあえず村に行けば安心そうだね」

「そうだね、村に行って一体ここがどこでなにが起こっているのか聞いてみよう」


二人は分かれ道を左に進んでいくことにした。10分ほど歩いた頃だろうか。


「グアーー」


突然呻くような鳴き声が聞こえた。図太い声を耳にした二人は、すぐに身を寄せる。そしてあたりを見回した。すると道のすぐ先、右側に洞窟のような大きな穴が開いているのが見えた。


「グアーー」


再び呻き声が鳴り響く。声は確実にその穴から出ていた。何かがいる、そう感じた時にはすでに遅かった。


「グルルル。グアア」


けたたましい呻き声を上げながら、大きな影が穴から出てくる。影は大きさを増し、すぐに二人の前に頭を出した。モンスターは蛇のように長い体に、ユニコーンのような鋭利なツノを持っていた。その胴体は太い丸太のようにずっしりとしており、口からは不思議な液体を垂らしていた。液体が地面に垂れるとその周囲はしゅるるると音を立てる。毒だった。胴体の2メートルほどが穴から出ているが、未だ尾は見えなかった。


「な、な、な、なにあれ。ねえ。この先は村じゃないの?モンスターいるのって右じゃないの?コウタ」


ナギは明らかに、モンスターの姿に動転していた。コウタはナギを抱き寄せ、モンスターの動向を伺う。モンスターはまだ二人に気付いていなかった。しかしモンスターは何かを探している様子だった。このままでは見つかるのも時間の問題だ。


「チャンスだ。いったん戻ろう、それしかない」


コウタは先ほどの分岐へと戻ることを決め、固まるナギを強引に引っ張った。不意を突かれたナギはバランスを崩し、転倒してしまった。周囲の石が散り、音を立てる。するとすぐにモンスターはこちらを向き、その体を伸ばし始めた。


「やばい、逃げるぞナギ。早く」


コウタは倒れたナギの手を素早く引き、一心不乱に逃げ去った。あまりの恐怖に、後ろを振り向くこともできなかった。途中何度もモンスターの呻き声が聞こえ、その度に恐怖に怯え、疲れを忘れるほど一心に逃げていった。

次第にモンスターの声も聞こえなくなり、気づけば先ほどの分岐に戻っていた。

分岐には尚、看板が立っていた。二人は肩で息をしている。コウタはモンスターから逃げ切り、安堵を感じた様子である一方、ナギはついていくので精一杯で、状況を把握できていない様子だった。息も戻らないまま、コウタは再度看板を確認した。


左に村あり

右にモンスターの巣窟あり


看板には無論、初めて通った時と同じ表記があった。しかし二人は下のほうに書かれた重大な表記を見落としていた。


左に村あり

右にモンスターの巣窟あり


※ただし左、途中に強敵の可能性あり、迂回はまっすぐ進め

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レベル30になった勇者には点Pが動いたって関係ない foreside @tatsuya100

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