林檎男

安良巻祐介

 

 ういりあむ・てるの真似か、或いは揶揄か、誰にもわからないが、青々とした林檎の絵を顔の真ん中に描いた男が、ちょうどその真ん中の真ん中を、銀色のひどく美しく鋭い矢によって貫かれて、辻の真ん中で絶命していた。不思議な事には、開けた場所で白昼であったにも関わらず、警察の懸命な捜査によっても犯人の足取り一つつかめないまま迷宮入りしてしまい、今では天に唾するように林檎の顔で周りを挑発した男が、天からの矢を受けて現代の立体戯画となったのだと、まことしやかに噂されている。

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林檎男 安良巻祐介 @aramaki88

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