炭酸水
kaito
第1話
炭酸水好きだよね?ほしい?
そんなメールが入る。確かに好きだがなぜメールで今聞かれるのだろう?
それに、ほしい?ってなんだ。ケースで買ったけど、余っちゃった!とか、その類だろうか?
自身の拙い思考力ではそれまでの推測だった。
夏本番に入りかけ、期末試験も終わった
7月10日、夏休みまで惰性で通う学校の帰路。
返信に困った1通。
とりあえず、好きだよ。くれるの?というような内容のメールを返信する。正確な文章はどうだったろうか?覚えがない。
すぐに返信がくる。じゃ、いつものとこで6時半ね。
いつものとことは互いの家の中間地点のお寺の裏手、2回ほど話した事のある程度のいつもの場所。いつもの場所の定義とは、他の人々のそれよりもうんと曖昧だと思う。
彼女のほうが先に着いていた。少し汗ばむ彼女のセーラー服がいつもより淡い色をしている。案外涼しい日なのに。はいこれと炭酸水を差し出される。
紫色のラベルはグレープのフレーバーを示唆している。
味付きかと思ったけど、香りしかなかったから要らない。そう言った。
なるほどと思う反面、ちゃんと見て買いなよと言いかけたが、自分も同じミスをした事があるので言うのを辞めた。
炭酸水を一口、炭酸が抜けた炭酸水。
砂糖が入っている炭酸飲料と違い弾け方がバリバリと激しいはずだが弱い。喉を少し刺激する。炭酸ガスの香り。新品と比べるとかなり弱い弱い。淡くグレープの香りが鼻をぬける。
彼女が飲んだあとの炭酸水を飲む。残った炭酸水を飲む。躊躇いもあったが彼女は何食わぬ顔で携帯電話を触っている。
もともと4分の3ほど入っていた中身は一気に4分の1に。
彼女の顔を見る。少し紅色に感じるのは暑さのせい。雲からのぞく太陽か。いつも澄ました顔がいま飲んだ炭酸水のようにすこし抜けた顔をしていたのは、気のせいだろうか?
炭酸水 kaito @belltree722
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