第90話 そこにいるはずのない人1
俺は
しかし、まくらさんが朝から準備をしていたのなら、あまり時間は残されていないと考えるべきだろう。
「大丈夫、かな?」
瑠衣の不安は当然だ。
なぜなら、すでに東雲は、この世にいない可能性だってあるのだから。
「……くそったれ」
「
考えてみれば、いつも、そうだった。
「俺はいつも口ばっかりだ」
幼い頃、
今だって
こんな
「そんなことないよ? 明は、凄いよ?」
瑠衣が俺を、まっすぐに見つめていた。
俺は瑠衣を見つめ返すが、その言葉の意味が分からなかった。
「でも、俺はいつだって――」
「私、明には何度も助けてもらったよ?」
素直に、驚く。
瑠衣が、そんな風に思ってくれているなんて、気付かなかった。
「ゴマちゃんが
「……瑠衣?」
「この前だって、シノちゃんを一緒に助けに行こうって言ってくれたの、凄く嬉しかった。それに私だけじゃない。私は明が、いろんなことに首を突っ込んで、誰かのために頑張ってるのを知ってるもん。私だけじゃなくて、他の人だって、明には絶対に感謝してるハズだよ」
力強く言われて、嬉しいけれど、少しだけ恥ずかしかった。
「……そうかな?」
「私も明には感謝してるから、瑠衣ちゃんの考えは正しいと思うわ」
不意に割り込んだ声に、俺は顔を上げた。
「久しぶり」
そこには、そこにいるはずのない人がいた。
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