第84話 ほんの目と鼻の先3
「なら、なんでよ?
混乱し終わって怒り出した
「東雲は
「……前提?」
まるで気づかない東雲に、俺は笑う。
「東雲は死なないし、死なせない」
東雲は、改めて目を
「最後なんて言うな。悲しむ人がいないなんて、そんな悲しいことを言うな。まくらさんだって
「……なんてこと!」
東雲は恥ずかしそうに、その顔を両手で隠す。
「
「惚れてなかったのかよ!? ……っていうか、それがやっぱり答えだろ? 東雲は死ぬ直前だから俺を選ぼうとしたんだろ? それは男として嬉しいけどさ? 本来はそういうもんじゃないし、東雲はもっと自分を大切にしてだな」
「獅子堂君って、やっぱり変わってるわ」
「それはお互い様だろ?」
「こんな時にも格好つけちゃって、勿体ないことをしたわね。私の気が変わらないうちに卒業すれば良かったのに、そんなことだから童貞なのよ?」
「うるせぇ! 大きなお世話だ!」
「本当に、大きなお世話で――その、獅子堂君?」
「なんだよ?」
「……ありがとう。嬉しいわ」
「……急に素直になるとか反則だろ!?」
俺たちはそれからも
胸だけでもひと揉みしたかったって本音は、墓場まで持っていこうと思う。
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