第83話 ほんの目と鼻の先2
「私には死んでも悲しんでもらえるような家族や人なんていなかったし、後悔するどころか、私は
「だから、獅子堂君?」
俺は緊張しながら、東雲の方へ寝返りを打つ。
ほんの目と鼻の先に、東雲の整った顔があった。
「恥ずかしいから一度しか言わないけれど、私、獅子堂君のことが好きよ?」
「……東雲?」
「私はもう少しでこの世を去るわ。だから、その前に」
東雲が俺のことを涙目で見つめている。
「私を抱いて」
俺は東雲のことをまっすぐに見つめ返した。
「俺は――」
東雲の両肩に手をかけ、ごくりと
「東雲を、抱かないっ!!」
「……はぁ!? な、なんでよ!?」
東雲の両眼が大きく開かれ、白黒していた。
「う、嘘でしょ!? こ、この状況は想定していなかったわ。いえ、ちょっと待って? いえ、その……ちょっと考えたぐらいじゃ理解できないわ! どういうことなのっ!? 私はこれでも覚悟を決めてここに来たのよ!? 私ほどの
「実際にあり得てるし、東雲は自己評価が高すぎるだろ」
俺の突っ込みも、東雲には聞こえていないらしい。
東雲は眉を寄せて悩み続ける。
「……そうか、分かったわ! 獅子堂君はルイルイに引け目を感じているのね? ルイルイのことが好きだから私を抱けない! なるほど分かったわ。それなら仕方ないわね!?」
「それも違うぞ」
俺の返答に、東雲は頭を抱えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます