第81話 東雲の胸は、デカかった


 東雲しののめとの勝負を終えた後、俺は風呂に入ってパジャマを着た。


 東雲に滅多めったちにされた体はひりひりと痛み、正直に言うと疲れが取れたかは怪しい。


 ちなみに、ここ数日間の着替えは、俺の修行中に瑠衣るいが家まで取りに行ってくれた。


 俺がこうして修行だけに打ち込めているのは瑠衣のお陰に他ならない。


 そういう意味でも、俺が東雲に勝てたのは俺の力と言うよりも、修行に関わってくれた東雲やせんさん、最後の勝負で手伝ってくれたまくらさん、そして、瑠衣の功績こうせきが大きいと思う。


 まだ鬼には届かなくても、あと一日である程度の形にはしてみせる。


 俺はそう誓うが、そのためには休むことも大切だろう。


 今日はずっと東雲と勝負をしていたせいで、すでに霊力も体力も限界だ。


 俺はさっさと寝ようと思い、真っすぐに廊下を歩いていたが、自室の前でふと疑問を覚える。


 俺の部屋の電気が点いていた。


 俺は電気を消し忘れて風呂に入ってしまっただろうか?


 違和感はあったけれど、風呂上りの眠気には抗えず、俺は深く考えず自室へのふすまを開ける。


 俺の部屋にはすでに布団が敷いてあって、その隣にパジャマ姿の東雲が正座していた。


獅子堂ししどう君、あのね」


 襖を閉めた。


「ちょっと! なんで閉めるのよっ!?」


 襖ががばっと開かれ、怒り心頭しんとうといった東雲がそこには立っていた。


 俺はあとずさりながら、恐る恐る聞いてみる。


「……なんで、東雲が俺の部屋にいるんだ?」


 東雲は〝よくぞ聞いてくれました〟というような表情で宣言する。


「今日は一緒に寝るわよ」


「はぁ!?」


 驚く俺の前で、東雲は自らのパジャマのボタンへと手をかける。


 思わず胸が高鳴る俺の前に、東雲の発育の良い、ブラに包まれた胸が、現れた。


 東雲の胸は、デカかった。


 宇宙飛行士の〝地球は青かった〟という言葉は有名だけれど、人類が圧倒的な存在感を放つモノと出会った時、その前で思いつく言葉なんてのは分かりやすい一言でしかないらしい。いや、そう言えば、あの言葉は嘘だと聞いた気がする。本当はどちらが正しいんだろう?


「……何をボサっとしてるのよ?」


 宇宙の神秘に怖気おじけづいている俺の前で、


「獅子堂君も、早く脱ぎなさい」


「――ッ!?」


 パジャマのズボンも脱いで下着姿になった東雲が、眉を寄せている。


「……あと、これは、お願いなんだけれど」


 東雲は頬を染め、俺を見上げる。


「恥ずかしいから、あまり見ないでもらえる?」

 

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