第78話 ちょっとした裏技


「それ、カッコつけてるつもり?」


「俺は形から入る主義なんだよ」


 昼を食べ終えた俺と東雲しののめは、再び道場で木刀を手に向かい合っていた。


 東雲が眉を寄せているのは――俺がまくらさんに借りた眼帯がんたいを右目に巻いているからだ。


「意味はあるぜ? まくらさんに確かめたんだが、わざと情報をさえぎることで他の感覚をするどくできるんだ。俺はくせがついて眼にばかり霊力を使っちまうけど、こうやって眼を隠せば、視界に対する霊力が半分で済むから――その分を他の筋肉にも使える。これが俺にとって一発逆転の秘策ひさくってわけ」


 俺の言葉に、東雲が薄くため息をついた。


獅子堂ししどう君なりに考えたみたいだけど、焼刃やきばもいいところね」


「正攻法で勝てないんだから、ちょっとした裏技を使うしかないだろ?」


「……そんな方法では、私を超えられないわ」


「やってみなけりゃ分からねぇさ」


 俺の言葉に、東雲が笑みを消した。


「現実を、その身に教えてあげる」

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