第70話 気持ちいいでしょ?1


 東雲しののめが、ごくりと生唾なまつばを飲み込んだ。


「少し手伝っただけで、こんなにも大きくて硬くなるなんて――触ってもいい?」


 東雲は俺の返事も待たず、その細く白い指をえる。


 むずがゆくて、思わず震えた。


「あっ、ごめんなさい。初めてだから敏感びんかんだものね? でも、こんな風になるなんて思ってなかったわ。……男の人って、こんなにも立派になるものなのね。血管も浮いているし、ガチガチで、爆発寸前って感じ――やっぱりまっていたのかしら?」


「……痛いぐらいなんだが、大丈夫か?」


 俺の不安に、東雲はくすりと笑った。


「少し溜めすぎちゃったかもね? でも、ちゃんと抜いてあげるから安心して」


 東雲が優しく笑いながら俺を見上げている。


 東雲は付け根をさするようにして緊張をほぐしてくれた。


「気持ちいいでしょ?」


 俺は東雲に身をゆだねるが、その整った顔が近くにあるというだけで、どうにかなりそうで――そんなことを考えていたら、


「この阿保あほどもがっ!」


 後頭部を引っ叩かれた。


「痛ってぇ!?」


 叫んで振り返ると、さっきまで寝そべってゲームにきょうじていたせんさんが仁王立ちしている。


「な、何をするんですか!?」


「それはこっちの台詞じゃ!」


 俺の言葉に、千さんは睨みを利かして口を開く。


「【練磨れんま】で腕の筋肉を増強するのはそれで充分じゃろうが! そんなことよりも〝硬い〟とか〝溜まっとる〟とか〝抜く〟ってなんじゃ阿保共っ! そんな卑猥ひわいな会話を続けられたら気が散ってゲームが出来んじゃろうがっ!!」


「……卑猥な、会話?」


 俺は眉をひそめるが、東雲は何かを察して顔を赤く染めた。


「どういう意味なんだよ?」


 俺は聞いてみるが、東雲はふるふると小さくかぶりをふるし、千さんはあきれ顔だった。


「貴様にはデリカシーが無いのぅ?」


 理解できないまま非難されて、少しだけ腹が立つ。


「なんだってんだよ?」


「ふん。貴様は分からんままでよい。むしろ理解できる奴の方が汚れておるからなぁ?」 

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