第63話 監視する役目


 幼い頃、施設で友達になった私たちが再会したのは、高校に入学してからよ。


 私はあまり他人に興味がなかったし、霊を退治することを自分の使命だと思ってそれまで生きてきたの。霊を斬り倒すだけの生活を続けてきた私は、それなりに腕の立つ霊媒師れいばいしになれたけれど、そんな私を、まくらさんが不憫ふびんに思ったのでしょうね。


 私の新たな仕事は〝鬼を宿した繊月せんげつ瑠衣るいを監視する役目〟だった。


 私は最初、その仕事を断ろうと思ったわ。


 だって、私はルイルイと同じように鬼を宿す可能性のあった子供だったのよ?


 私はその運命から逃れたけれど、ルイルイはそうじゃない。


 ただ運が悪かっただけで、ルイルイは数年後に死ぬことが約束されている。


 そんなものを間近で見せられるなんて、私に耐えられる気がしなかったから。


 でも、私の希望は叶えられなかったわ。


 どれだけ私を苦しませれば気が済むのかと霊媒師協会やまくらさんをうらんだけれど、今ならその理由も分かるの。ずっと仕事しかしてこなかった私に、その仕事から離れて――普通の高校生活を送りなさいという、まくらさんの手心てごころだったのでしょうね。


 話がれてごめんなさい。


 えっと、どこまで話したかしら?


 ……ええ、そうだったわ。


 結局、私はその仕事を遂行すいこうすることになったの。


 私はルイルイと同じクラスになって、放課後も一緒に行動したわ。


 人付き合いが苦手な私と、誰とでも仲良くなれるルイルイが一緒にいることに、クラスのみんなは不自然なモノを感じていたんじゃないかしら。


 ルイルイと一緒にいて驚いたのは、私には後ろめたい気持ちがあったのだけれど、ルイルイにはそんな影が一切無かったことよ。自分が数年後には死んでしまうと知っているハズなのに、ルイルイは今を一生懸命に生きていて、いつでも楽しそうに笑っていて。


 私はそんなルイルイに、少しずつかれていったわ。


 監視役という嫌われてもおかしくない立場の私にも、ルイルイは優しかった。


 普通ならきらって罵倒ばとうしたって構わない立場の私なんかを、ルイルイは好きでいてくれた。


 一年ぐらい一緒に過ごして、素直に思ったわ。


 こんなにも素敵な子が死んでしまうなんて、なんて不公平な世界なんだろうって。


 だから、私が身代わりになることにしたの。

 

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